事例名称 |
農薬中間体製造工程における不適切な温度管理によるDMTPの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1977年04月19日 |
事例発生地 |
大阪府 大阪市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1977年に大阪市西淀川区の農薬工場において、爆発が起こった。農薬中間体製造中DMTP原体を融解槽に仕込み蒸気加熱・攪拌をした。温度計不良から過熱が起こり分解ガスが発生した。その後、原動機のスパークにより着火、爆発したものと想定される。 |
事象 |
農薬中間体製造装置の溶解槽の過熱により発生したガスが着火・爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溶融・溶解 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
DMTP(一般名:メチダイオキシン)(o-o'-dimethyl-S-[5-methyl-1,3,4-thiadiazole-2(3H)only-(3)-methyl]dithiophosphate),図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
農薬中間体TP22(有機リン系殺虫塗布液用)製造装置で、DMTP(商品名スプラサイド)原体を融解槽に仕込み、さらにほかの原料を仕込んで蒸気加熱・攪拌をしていた。温度計不良から過熱となり分解ガスが発生した。そのガスが原動機火花により着火(推定)、爆発した。 |
原因 |
短い棒状温度計を使用し、温度測定値が実際より低く示された。そのため加温しすぎ、DMTPが分解してガスを発生した。原動機のスパークにより着火爆発したものと想定される。 |
知識化 |
温度管理が安全上重要な鍵を握るところでは、人力だけに頼ることなく、測定装置の冗長化や使用熱媒にも注意する。 |
背景 |
1.管理ミスが最大の原因であろう。温度計の長さ50cmの鞘管に当初は温度計がなく、運転開始後30cmの温度計を差し込んだ。運転員のヒューマンエラーとも取れるが、温度計の重要さの教育不足と温度計の管理の両面がより大きな問題であろう。 2.装置の設計のミスも考えられる。温度上昇が危険と分かっているならば、温度が必要以上に上がらない程度の熱媒を使うとか、温度計を複数設置するとか温度上昇警報を設置する等が必要であった。 3.危険物取り扱いに防爆タイプではないモーターを使用していた。これも問題である。 |
よもやま話 |
☆ 槽やタンクの温度測定は意外に難しい。壁面から中心部に向かって、上部から底部に向かって温度勾配がある。壁面に近いところでは外気温度の影響もあるし、鞘管からの放熱もある。十分な長さの温度計が必要であろう。 |
データベース登録の 動機 |
温度計不良に起因する過熱による爆発例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、熱安定性の不勉強、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不良行為、規則違反、温度測定できない状態で加熱、計画・設計、計画不良、重要な温度監視に温度計1本、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.156
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物的被害 |
平屋建工場338平方mのうち30平方m焼損 |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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