事例名称 |
運転温度を上げたために異常反応を起こしたシュガーエステル製造装置の溶剤回収缶の破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年09月25日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ショ糖と脂肪酸とをエステル化したシュガーエステル(食品などの添加物)の製造装置で、運転サイクルが終了し、溶剤のジメチルスルホキシド(DMSO)を真空蒸発で回収した。規定温度以上に温度が上がり、異常反応により内圧上昇を起こし、回収缶が破裂した。 |
事象 |
シュガーエステル製造装置で溶剤の蒸発による回収缶が破裂した。蒸発温度を上げたことにより熱分解反応を起こした。内圧が上昇し、回収缶が破裂した。なお、当該蒸発缶の最初の運転であった。回収缶概要を図2に示す。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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化学反応式 |
図4.化学反応式1
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物質 |
ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、図5 |
事故の種類 |
破裂 |
経過 |
シュガーエステル製造装置で1運転サイクルが終了し、溶媒の回収が行われた。1バッチ目の回収を終了し、2バッチ目の回収作業に入った。 1987年9月25日05:00 2バッチ目の液の仕込みを開始した(スチーム加熱を開始した)。 20:00 液の仕込みを終了した。 22:50 スチームによる加熱を終了した。 23:00頃 塔底液の抜き出しを開始したが、通常より粘度が低いように見えたので抜き出しを中止し、再濃縮の準備に入った。 23:15頃 ドカーンという音とともに回収缶が破裂した。 |
原因 |
本回収缶内の仕込液は,ジメチルスルホキシド(DMSO)、ショ糖、乳酸カリウム及び製造工程で生じた副生成物、分解生成物である。溶媒回収は通常130℃で行うところ、事故時には160℃になっていた。そのため、異常反応が起こった。なお、温度上昇は意図的に行われたか、それとも新しい装置のためたまたま高温になったか、不明である。 |
対処 |
1.スチーム、温水等の入り口弁を閉止した。 2.プラント全系を緊急停止した。 3.危険物などの安全措置をとった。 |
対策 |
1.設備面では回収缶の温度、圧力が設定値より上昇した場合は、異常高警報を出し、さらに上昇した場合は熱源を自動停止する。 2.決められた温度を守るように再教育をする。 |
知識化 |
不安定な物質を生成する系では不用意に温度を上げると取り返しのつかない事態になることがある。装置の運転温度は理由があって決められている。不用意に変えてはいけない。 |
背景 |
高温にした、あるいは高温になったことが原因であるが、なぜ高温になったかはっきりしない。一説では、溶媒の回収効率を上げるため平常より高い温度で運転していたとされる。これが正しければ、本来温度を上げるためには、反応特性、装置特性を考え十分に注意深い検討が必要であるのに、その検討をしなかったか、あるいは間違った結論に至った可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
運転温度を不注意に上げて失敗した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、温度上昇時の反応危険を考えない、計画・設計、計画不良、不注意な温度上昇計画、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、2名死亡
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情報源 |
高圧ガス保安協会編、高圧ガス保安総覧(1988)、p.138-141
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100(1991)、p.56-57
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.165-168
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.140
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死者数 |
2 |
物的被害 |
溶媒回収缶3.3平方m破損.架構24.5平方m損傷.機器及び配管. |
被害金額 |
約2700万円(建設時及び購入時価格)(石油精製及び石油化学装置事故事例集) |
マルチメディアファイル |
図2.溶媒回収缶図
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図5.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/蒸留における安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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