事例名称 |
医薬中間体製造中に反応器の冷却能力が不足し異常反応を起こし破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年06月01日 |
事例発生地 |
和歌山県 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1990年、和歌山県の医薬品中間体合成装置で、反応器にリン酸トリメチル、水、オキシ塩化リン、N-ベンゾイル-N-メチルアミンを仕込み、50℃まで昇温後、冷却しながらテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン混合液を添加した。腐食等により冷却ジャケットの冷却能力が低く、反応温度が上昇し暴走反応が起こった。また、急激に内圧も上昇した。ここで、オキシ塩化リンやトリメチルリン酸エステルが不安定になり急激に分解(可能性推定)した。圧力放出弁が付いておらず空気抜きバルブを開放したが、反応器が破裂した。 |
事象 |
医薬中間体製造装置で破裂があった。腐食のため反応器ジャケットの冷却能力が低下したことにより反応器温度が上昇し、分解反応が起こり内圧上昇により破裂した |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
その他 |
化学反応式 |
図3.化学反応式1
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物質 |
リン酸トリメチル(trimethyl phosphate)、図4 |
オキシ塩化リン(phosphorus oxychloride)、図5 |
事故の種類 |
破裂 |
経過 |
医薬品中間体合成装置で、反応器にリン酸トリメチル、水、オキシ塩化リン、N-ベンゾイル-N-メチルアミンを仕込み、50℃まで昇温後、冷却しながらテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン混合液を添加した。反応温度が上昇し暴走反応が起こった。また、急激に圧力も上昇した。圧力放出弁が付いてなく空気抜きバルブを開放したが、反応器が破裂した。 |
原因 |
1.腐食等によりジャケットの冷却能力が低下して反応温度が上昇し、反応が暴走したものと思われる。 2.内圧の上昇に対応する圧力放出弁が付いていなかったため、放圧できずに破裂した可能性がある。 3.リン酸トリメチルは温度や圧力の上昇で不安定となり、急激な分解が生じた可能性も大きい。 |
知識化 |
1.取り扱う物質の温度安定性に注意し、温度上昇がすぐに暴走反応に結びつくようなら、冷却能力の継続的管理が必要であろう。 2.何らかの異常反応が考えられるなら、通常の法規では要求されなくとも、圧力上昇に備え容器には圧力放出弁をつけるべきであろう。 |
背景 |
1.ジャケットの腐食により冷却能力が徐々に低下したものと思われる。徐々に起こる性能低下なら経時変化を追えるだろうが、その管理をしていなかったと推定できる。(運転管理不十分) 2.安全弁が付いてなかったために破裂した可能性がある。(プロセス設計不備) 3.取扱い物質の安全性の把握に手抜かりがあった可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
腐食による冷却能力が低下した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、冷却能力の経時変化無視、調査・検討の不足、事前検討不足、反応危険の検討不足、計画・設計、計画不良、緊急放出設備無し、使用、保守・修理、腐食の見落し、非定常行為、無為、温度上昇に対しなにも出来ない、機能不全、ハード不良、冷却能力低下、不良現象、化学現象、異常反応、破損、大規模破損、破裂、身体的被害、負傷
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.127
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負傷者数 |
2 |
物的被害 |
反応容器破裂破損 |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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