事例名称 |
タンカーのレベル計の絶縁で静電気による荷役中の爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1985年12月17日 |
事例発生地 |
岡山県 倉敷市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1985年12月17日、岡山県にてケミカル船が、ベンゼン1,000トンを積み込むために桟橋に着桟した。ベンゼンの積み込みを行っていたときに、突然爆発炎上した。当船の船倉レベル計のフロート部には、騒音防止措置として、ガイドパイプとの接触部にテフロンリングが装着されていた。このため、フロートが船体と絶縁状態となり、ベンゼンの積み込みによる流動電荷がフロートに集積した。ある時点で、フロートとガイドパイプとの間でスパークが発生し、船倉空間部のベンゼン蒸気に引火し、爆発火災に至ったと推測される。 |
事象 |
ケミカル船で液面計のフロートが絶縁されていた。荷役中に発生した静電気により積荷が爆発し、船舶火災となった。 |
プロセス |
輸送(輸送機関) |
物質 |
ベンゼン(benzene)、図2 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1. 当該船舶はケミカル船であり、ベンゼン1,000トンを積み込むために桟橋に着桟し、荷物の積み込みを開始した。 2. 同船は4つの船倉を有し、第2、3船倉へ積み込みを終了し、第1船倉への積み込み中、突然爆発炎上した。 3. さらに、桟橋側の防舷材へ燃え移った。 4. 直ちに荷役作業員が当該船のもやい綱を切断し、付近のタグボートにより離桟させた。 5. その後、陸側、海上の両方が鎮火された。 |
原因 |
当船の船倉レベル計のフロート部には、騒音防止措置として、ガイドパイプとの接触部にテフロンリングが装着されていた。このため、フロートが船体と絶縁状態となり、ベンゼンの積み込みによる流動電荷がフロートに集積した。ある時点で、フロートとガイドパイプとの間でスパークが発生し、船倉空間部のベンゼン蒸気に引火し、爆発火災に至ったと推測される。 |
対処 |
1.発災したタンカーを離桟させた。 2.放水及び発泡による消火作業を行った。 |
対策 |
1.レベル計のフロートと船体が絶縁された船舶の荷役を禁止した。 2.船舶の入港の際、あらかじめ船舶図面などにより突起物がないことを点検する。 3.船倉に存在する絶縁された導体の危険性について再確認した。 4.「静電気災害防止標準」「作業安全標準」の改定をした。 |
知識化 |
アースを取って設計製作を行った設備でも、使用中や改造工事で意図せずに絶縁状態になることがある。危険物を取り扱うタンカーの船員が、危険物や静電気に対し十分な知識を持っているわけではない。危険物製造会社の社員は船員にも教育する必要があるのではないか。 |
背景 |
ケミカル船のフロートが絶縁状態になっていて、それに気付かなかった。危険物船では考えにくいことであり、陸側、船側とも被害者かもしれない。 |
よもやま話 |
12月の瀬戸内海であるので、ベンゼン搭載のハッチ気相部は乾燥した上に可燃性混合気を形成していたものと思われる。またケミカル船ではハッチを窒素シールすることは殆どない。最悪の条件がそろっている。船側の注意だけでなく、危険物の取扱に熟知した製油所側も関与した方がよかった。なお、液面の上げ下げがある場合、平衡濃度になるには時間がかかる。気温が高く、気相部の組成が燃焼限界以上の濃度になる時でも、液面の上げ下げで必ず燃焼範囲に入るときがあり、その時には同じような原因で爆発する可能性はある。言い換えれば、気温に関係なく静電気を溜めてはならない。 |
データベース登録の 動機 |
意図せずして電気絶縁状態にしたための事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、思い込み、使用、運転・使用、機器の使用(絶縁)、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、電気故障、絶縁、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、事故死2名
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス事故の現状 昭和60年の事故(1986)、p.140-141
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.101
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死者数 |
2 |
物的被害 |
船首亀裂.桟橋の防艇材,積み込み用ゴムホース焼損.ベンゼン |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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