事例名称 |
エチレン製造装置においてドレン弁開の見落としによる原料ナフサの漏洩火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年05月16日 |
事例発生地 |
大阪府 高石市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1989年5月16日、オレフィン製造装置の分解炉付近でナフサ漏洩火災が起こった。分解炉16基のうち、3号炉のデコーキング作業に伴い、原料ナフサの供給停止後、ナフサ配管のスチームパージを行い、続いてエタン配管のスチームパージをはじめた直後、配管にあるドレンバルブ付近で火災が発生した。 |
事象 |
分解炉のデコーキングをする準備として配管のパージを行う。そのときにドレン弁が開いていて、原料ナフサが漏洩し着火し火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
ナフサ(naphtha) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
分解炉16基のうち、3号炉のデコーキング(配管内に付着した硬質の炭素を除去する)作業に伴い、原料ナフサの供給停止後、ナフサ配管のスチームパージを行った。続いてエタン配管のスチームパージをはじめた直後、配管にあるドレンバルブ(小口径大気放出弁)付近で火災が発生した。 |
原因 |
エタン配管のドレンバルブが前回のデコーキング終了時に開にされたままであった。そのままで、エタン配管のスチームパージを行ったため、エタン配管とナフサ配管の合流部に滞留していたナフサがエタン配管に逆流し大気に漏れ、分解炉内の炎により着火したものと推測される。言い換えると前回作業時のヒューマンエラーと作業開始時のラインアップミスであろう。 ラインアップ: 作業開始前に関連する配管や機器のすべてのバルブの開閉状態を確認する作業で、最重要の基本作業の一つである。 |
対処 |
プラントの停止 |
対策 |
1.不必要な配管のドレン弁の撤去をする。 2.弁操作の確認の徹底をする。 3.現場管理の再教育が必要と思われる。 |
知識化 |
デコーキング配管のように、時間間隔を置いて使用する配管は、前回の作業直後に再び作業するのではないので、停止時の確認が適切でなくとも直ぐには問題が起こらないことがある。そのような配管などの再使用時のラインアップは慎重に行う必要がある。 |
背景 |
1.前回のデコーキングで開にしたバルブをそのまま放置した工事管理、および運転管理のミスと考えられる。なお、ドレン弁等は使用時以外はバルブを閉とした上に、キャップまたはブラインドフランジを取り付け、バルブの洩れや緩みに備えるのが通常である。キャップ等が取り付いていないことをを見落とした点も問題である。 2.エタン配管とナフサ配管の合流部の形状が悪いことも原因の一つと考えられる。 |
よもやま話 |
☆ 2液が合流する配管で、液抜きやパージが必要な配管はできるだけ合流点近くに縁切り弁を設けたり、合流点直近の下流にドレン弁を設け、そこから合流点下流の液を安全な設備に抜き出す様な配管構成、運転法にしたらどうであろうか。 |
データベース登録の 動機 |
小さな現場管理事項を見落とした例 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、慣れ、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、計画・設計、計画不良、設計不適、定常動作、誤動作、不動作、二次災害、損壊、漏洩・火災、身体的被害、負傷、1名負傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.314-315
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1990)、p.153、164-165
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.113-116
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
分解炉(3号炉),エタン配管及び保湿材,弁類,一部熱煙損.電気,計装用ケーブル一部焼損.ナフサ約50リットル被害. |
被害金額 |
約160万円(危険物に係る事故事例) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
吉永 淳 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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