事例名称 |
製油所の減圧蒸留装置におけるポンプ切替に伴うドレン弁からの重質残渣油の漏洩、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年05月23日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
T石油K製油所の減圧蒸留装置のオーバーフラッシュポンプまわりのドレン弁から重質油が漏れて、出火した。漏れの原因は、前年の定期修理時にバルブの内にスラッジが入り弁を完全閉止できなかったものの、それが約1年間の運転の熱と振動で閉鎖部が解消され、ポンプの切替により漏洩した。ドレン弁先端にキャップをしていなかったことも原因の一つである。 |
事象 |
本装置に設置されたオーバーフラッシュポンプAのストレーナー詰まり清掃のためポンプBに切り替えた。その後、Bポンプ側のドレン弁から重質油が漏れ、火事になった。なお、当該箇所の運転温度は約315℃であった。 オーバーフラッシュポンプ: ここでは減圧蒸留塔塔底の重質残査油を再度蒸留するため加熱炉へ送るポンプのこと。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図2.装置模式図
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物質 |
重質油(heavy oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1989年5月から6月に定期修理工事を行った。 スタート後A号機とB号機を交互に運転していた。 1990年5月23日14:00頃 オーバーフラッシュポンプのストレーナーの吸入側詰まりのため、ポンプをAからBへ切り替え掃除をした。清掃終了後もBポンプの運転を継続した。 19:56 計器室でBポンプの吐出量低下警報が作動したため、作業員が現場に駆けつけたところ、Bポンプ付近で火災を発見した。 |
原因 |
火災の前年5~6月に定期修理を行った際、系内の油を排出するために開放したドレン弁にスラッジ等が混ざった。そのため、弁は完全に閉鎖されない状態となっていた。その後の装置の運転により長期間にわたり熱と振動を受け、開口部を閉鎖していたスラッジ等が変形、移動した結果、閉鎖部が貫通し、ここから重質残査油が噴出し、発火したものと推定される。 火源は、静電気の可能性もある。 |
対策 |
1.ドレン弁からのスラッジ等の除去方法の徹底をする。具体的な方法を以下のようにする。 (1)定期修理時の総合気密テスト実施後、系内の窒素または蒸気を放出する際は必ずドレン線を使用する。 (2)ドレン線に残っているかも知れないスラッジ等の夾雑物は放出する窒素(蒸気)で除去する。 (3)そのドレンバルブが完全に閉止できるかの確認は、ドレン弁を閉止したときに放出窒素(蒸気)が止まることをもって行う。 2.全てのドレン線の端末にキャップを装着するとともに、リストを作成し定期的に点検する。 3.従業員に対し、通報体制を含めた保安教育及び訓練を実施した。 |
知識化 |
定期点検の作業に起因する運転中の事故は多い。バルブは漏れることを前提に安全確保を考えることが重要であることを示している。漏れる原因はいろいろあるが、重質油を取り扱う場合は、スラジなど固形分の噛み込みに注意する必要がある。 |
背景 |
1.作業面では、ドレン弁の先端にキャップをしなかった運転開始時の作業の手落ちと、約1年間もキャップをしないで放置していた運転管理の問題が考えられる。 2.重質油にはスラッジなどの固形分があり、それがバルブの溝に貯まりやすいことは石油精製業では一般的である。その対応がなかったことが真因であろう。 |
データベース登録の 動機 |
ポンプを切り替えたらドレン弁の詰まりが取れて漏洩した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、取扱い不適、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、定常動作、不注意動作、手抜き、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、熱流体現象、詰り物の緩み、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1990)
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.23-25
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物的被害 |
配管表面焼焦、計器の一部焼損。重質油約900Lが流出し床面に固着,一部焼失 |
被害金額 |
180万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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