事例名称 |
火力発電所のタービン油供給装置の油圧配管がサポートに拘束され作動油の漏洩、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年11月28日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
火力発電所 |
事例概要 |
T電力K発電所の3階建て第5号施設の発電用タービン付近から発煙したが、すぐに消火した。 発電設備の定期整備後の試運転中、高圧加減弁制御用油圧配管のフランジ部から作動油が漏洩滴下し、蒸気配管サポートのロッドを伝わって蒸気配管保温材に滲み込み発火した。作動油の漏れは、配管の温度上昇による伸びを吸収できないサポートに起因した。 |
事象 |
発電設備の定期整備を終え試運転中、タービンに送り込む蒸気の量を調節する高圧加減弁の制御用油圧配管のフランジ継手から、作動油が漏れ、下方にあった主蒸気配管の保温材に染み込み発火した。 図2参照 |
プロセス |
使用 |
物質 |
作動油(hydraulic oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1997年11月21日 定期修理後始めてタービン軸受油圧配管に通油した。問題なし。 11月22日 タービン軸受油圧配管に0.16MPaGに加圧した。問題なし。 11月23日 タービン軸受油圧配管に0.54MPaGに加圧した。問題なし。 11月28日 ボイラーをスタートし、調整後、発電タービンをスタートした。 ボイラーのスタートから約20時間後にパトロール中の係員が発火を認め、消火器で消火した。 その後油圧配管の元バルブを閉め漏洩を止め、さらに発電機を停止した。 なお、洩れた制御用油圧配管はタービン軸受油圧配管の一部である。 |
原因 |
1.作動油が漏洩した原因 (1) タービン供給蒸気を制御する高圧加減弁の操作用作動油の2インチ配管に溶接された支持金具から3/4インチの制御油配管のサポートをUバンドでとっていた。その部位で制御油配管の動きが拘束されていた。 (2) 配管サポートの一つは制御油配管曲がり部からの距離が短く、上下方向の配管移動を拘束する要因になっていた。 (3) 制御油配管が接続されている高圧加減弁アクチュエーター部はタービンが運転されると熱影響により、上下方向等に移動するが、上記により制御油配管(3/4インチ)の動きが拘束されていたため、加重が加わり、間隙が生じた結果、作動油が漏洩した。 2.火災原因 漏洩した作動油は、蒸気タービン用コンクリート基礎等を伝わり滴下した。その漏洩油が、主蒸気配管スプリングサポートのロッドを伝わって落ちて、主蒸気配管保温材に浸透し、主蒸気配管の外面の高温により発火した。 |
対処 |
1.パトロール中の作業員が発見し、消火器で消火した。 2.公設消防と自衛消防隊が出動した。 |
対策 |
1.配管支持部が弁の移動に追随できるように、支持部に可撓性をもたせるよう設計変更した。 2.蒸気配管保温材に油が浸み込まない対策を行う。 |
知識化 |
1.消防法の危険物になっていない潤滑油でも、可燃性液体であり、その取扱いは危険物に準じて行わねばならない。 2.定期点検工事後に起こった事故である。小配管のサポートは、多分Uボルトの緩みを何の気も無しに締め直したと推測する。配管サポートは固定するだけがその機能ではなく、移動する部分と固定すべき部分と適切な関係を保つ役割もしている。そのあたりを考えて、ほんの些細なサポートにも十分な注意が要求される。見掛けは小さな事故ではあるが、本質的な問題を提起している。 |
背景 |
管理不十分による工事ミスが主原因と考えられる。運転再開後に温度影響で移動するバルブに対し、配管が追随する必要があるが、定期点検工事中に、この点の配慮が忘れられたのではないか。小配管のサポートは現場指示で行われることが、多々あるが、教育不足あるいは注意不足ではなかったでのはないかと推測する。 |
データベース登録の 動機 |
配管サポートの取りつけ不良による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、経験不足、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、計画・設計、計画不良、設計不良、機能不全、ハード不良、配管サポート不良、破損、破壊・損傷、漏洩、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、T社K発電所 危険物一般取扱所(5号タービン油供給装置)火災概要、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1997)
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物的被害 |
作動油500ml漏洩、保温材及び作動油若干焼損 |
マルチメディアファイル |
図2.漏えい箇所図
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備考 |
作動油(FBK56)の性状:発火点468℃ 引火点256℃。現行消防法では、引火点が250℃以上のものは危険物から除外される。しかし、だからといって火災危険が全くなくなるわけではない。 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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