事例名称 |
火力発電所燃料サービスタンク修理中の爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年05月26日 |
事例発生地 |
東京都 品川区 |
事例発生場所 |
火力発電所 |
事例概要 |
電力会社の発電所で爆発火災事故があった。発電用ボイラーに燃料を供給するための200kl燃料サービスタンク付近において燃料供給配管の改造工事が行われていた。燃料供給ポンプの空気抜き配管の溶断作業中に配管内で発災し、タンク爆発に拡大した。当該配管はタンクまでバルブがなかったため、タンク気相の可燃性蒸気が配管内に進入したことが原因である。 |
事象 |
電力会社の発電所の燃料配管関係の工事中に爆発・火災が起こった。燃料供給ポンプから燃料サービスタンクへ戻している空気抜き配管の切断工事中に着火、配管内を火炎が伝播してサービスタンクで爆発が起こり、引き続きタンク及び防油堤内の火災になった。都心に近く、煙等の被害の影響は大きかった。図2参照 |
プロセス |
貯蔵 |
物質 |
原油(crude oil) |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1. 発災タンクを含む発電系統は定期点検のため4月上旬から停止していた。 2. 当該タンクには停止時の洗浄用に用いた軽油と残存原油との混合油が大量に残っていた。 3. 当該タンクから発電用ボイラーへの燃料供給配管変更の一部として、燃料供給ポンプ吐出の空気抜き配管の変更工事のため、溶接を始めた。 4. 当該タンクが突如爆発した。 |
対策 |
従来の安全のあり方を全面的に見直す必要がある。 1.安全を確保出来るような対策を立案実施する体制を作る。 2.そのために工事の危険性を事前評価を行う。 3.以上のことが出来るように保安教育・訓練を行う。 他タンクについても、放爆構造が阻害されていないか見直しが必要であろう。 |
知識化 |
原油は、見掛けは重油に近いが、低沸点成分も含めた多くの炭化水素の混合物で、その火災性状はガソリンに近い(引火点は0℃以下であることが多い)。窒素シールがなければ、軽油との混合物でタンク気相部に爆発性混合気が作成されても不思議はない。 |
背景 |
1.軽質炭化水素が大量にあるタンクと何の縁切りもされていない配管に直接火を使った。火気使用に対する安全対策が取られなかった。通常は、工事箇所よりタンク側に仕切板を入れるか、配管の一部を取り外す。 2.安全に工事出来る状態を作るのは持主(運転側)の責任であろう。その意識がなかったのではないかと推測される。 3.タンクが大きく破損したのは、手摺り等の溶接のため、本来簡単に外れるべき放爆構造の天板が拘束されていたためである。 |
よもやま話 |
☆ 日本を代表する会社の一つではあるが、安全対策はどうなっているのだろうか。下請け会社が工事を行う際の雰囲気面の安全対策は運転会社の責任範囲であろう。 |
当事者ヒアリング |
火災直後調査 |
データベース登録の 動機 |
タンクと直結している配管に火気使用工事を行ったための事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、原油性状他理解せず、計画・設計、計画不良、パージ計画工事計画不十分、使用、保守・修理、溶断、不良現象、化学現象、蒸発、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、事故死4名、身体的被害、負傷
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情報源 |
長谷川和俊(安全工学協会編)、火災爆発事故事例集、コロナ社(2002)、p.138-146
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1988)、p.138-141
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100(1991)、p.53-54
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.47-49
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死者数 |
4 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
原油と軽油の混合油164.08kLの入った容量200kLのコーンルーフ形屋外タンクが爆発し屋根約が15m吹き飛び,本体倒壊.混合油が防油堤内に流出・炎上し約100kL焼失 |
マルチメディアファイル |
図2.タンク、配管図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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