事例名称 |
計装品の設計ミスが遠因となり落雷でジェット燃料タンクの爆発炎上 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年07月01日 |
事例発生地 |
北海道 千歳市 |
事例発生場所 |
自衛隊基地 |
事例概要 |
千歳基地内ジェット燃料タンク(覆土式、直径27m、高さ6.1m)に落雷、爆発、炎上した。約3時間にわたって火災となった。液面計に落雷し、液面計部品に抵抗の大きいところがあり、それによりタンク内で放電し、タンク上部の可燃性混合気に着火した。 |
事象 |
自衛隊基地にある覆土式燃料タンクが落雷時に爆発炎上した。図2参照 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
JP4(JP4) |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
容量3260klの覆土式のタンクにほぼ満タンのジェット燃料が貯蔵されていた。雷雨時にタンクに落雷があった直後に爆発炎上し、タンク全壊、内容物が焼失した。火災は約3時間後に消火した。 |
原因 |
1.直接の原因は、落雷である。タンク上部の空中に出ている液面計のコンジットパイプ又は液面計本体に落雷が起こり、これがタンク内で放電し、タンク内の可燃性蒸気に着火し、爆発した。タンクには避雷針が設置してあったが十分に機能していなかった。 2.タンク本体は覆土されているが、本体に接続してタンク上部から空中に突出しているものが、液面計など4ヶあった。その中の液面計の測定テープに放電痕があり、そこで放電したと推定された。他の3ヶ所の突き出し部は全て本体に直接溶接され、電気抵抗の大きいところもなく、放電した痕もなかった。 |
対策 |
1)液面計等の電気設備は、放電しない方式とする。 2) タンク上部に可燃性蒸気が形成されない構造とする。 3)機械設備など、主たる目的だけでその道の専門家だけで設計するのではなく、関連するカテゴリーの専門家の協力も求める。 |
知識化 |
この事故では計器としてより良い精度を生むための設計が、他の目的(導電性の良いこと)を無視して行われた。一つの機械、計器にも主たる目的だけではなく、各種の機能が要求されることが多い。色々な専門家の協力が必要なことを示している。 |
背景 |
液面計の抵抗値は本体、避雷設備と同じく10Ω以下で設計されていた。しかし、部分的にゴム製のベローズが使われ、そこで抵抗が大きくなり、高電位を生じた。設計の見落としと考えられる。 液面計の測定誤差を少なくするため、使った部品が抵抗になった。2つの目的があるにも拘わらず片側しか考慮できなかった。 |
よもやま話 |
覆土式タンクの事故は、このころ百里、千歳と2件起こった。覆土式タンクは防衛上の理由で作られているが、防災上も安全と言われていた。しかし、一連の爆発火災でこれらが必ずしもそうではないことが分かった。百里の爆発火災も雷によるものであった。ただし、これ以降は、日本国内では火災例は聞かない。 このように覆土式タンクは、今回事故が続いたが、防災面からは地上式に比べて望ましいと考えられる。 |
当事者ヒアリング |
事故後、類似のタンクを調査(各務原、大分) |
データベース登録の 動機 |
覆土式燃料タンクの落雷による火災の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全と思いこむ、計画・設計、計画不良、落雷対策不備、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、負傷者1名
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情報源 |
長谷川和俊(安全工学協会編)、火災爆発事故事例集、コロナ社(2002)、p.138-146
日本火災学会、タンク火災 <基礎知識と防災活動>(1990)、p.36
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
タンクの屋根板および上面の覆土の土砂がタンク内に陥没し,燃料残油中に埋没.屋根板の支柱は大半座屈. |
マルチメディアファイル |
図2.覆土式タンク概略図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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