事例名称 |
高温スラッジの落下による焼入油槽の清掃中の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年05月02日 |
事例発生地 |
埼玉県 八潮市 |
事例発生場所 |
金属製品工場 |
事例概要 |
ガス浸炭連続熱処理炉の焼入炉出口の焼入油槽内のスラッジスケールを年に1回清掃するため、1989年4月29日午後から作業を停止していた。5月2日油を全部抜き取り,作業員1人が焼入油槽に入り底部のスラッジスケール除去作業を行っていた。その作業の終了間際,落下シューターに付着していたスラッジスケールの大きな固まりが焼入油槽に落下,油槽に付着していた焼入油が炎上した。なお、処理炉の運転温度は880℃であり、スラッジスケールが落下したときでもシューターの温度は300℃であった。 |
事象 |
ガス浸炭連続処理炉と焼入油槽によりネジの焼入を行う工場で、年に一度行う焼入油槽内のスラッジスケールの取除き作業の初めに、糟内の清掃作業をしていた。落下シュートからスラッジスケールの大きな固まりがタンク底部に落下し炎上した。 図2参照 スラッジスケール: 鉄粉が油と一緒に固まりになったもの |
プロセス |
使用 |
物質 |
焼入れ油 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1989年4月29日午後 焼入湯槽の運転を中止し、降温作業に入った。 5月1日08:00頃 清掃開始 5月2日 焼入油槽の油を全て抜き、作業員が油槽に入り、スケールの取り除き作業を開始した。終了間際に上部のシューターよりスラッジスケールの大きな固まりが落下し、油槽に残っていた付着油が発火、火災になった。 |
原因 |
運転中の熱処理炉にあっては、炉内温度が880℃あり、清掃作業のため4月29日の午後から火を止めていたが、炉内温度は十分に下がりきらず(事故時約300℃)、シューターの温度もまだ高かった。そのシューターから落下したシューターの内部に付着していた高温のスラッジスケールも高温で、焼入槽に付着して残っていた焼入油を発火させた。 |
対策 |
1.引火点が高い焼入油といえども火災になること、むしろ、油の温度が高く消火の困難性があることを教育する。 2.シューターと焼入油槽間にスラッジ等が落ちないような仕切を作成する。仕切の取付けが困難なら、炉の温度が十分に低下するまで、油槽の油を抜かない作業マニュアルにする。 |
知識化 |
2001年に引火点が250℃以上の焼入油は危険物から除外されたことから考えても、危険性は小さいはずだが、焼入油の火災は結構多い。一度火災になれば油の温度が高い分消火はしにくい。 |
背景 |
推測ではあるが、平常運転でははるかに高温の物体を処理し、火事にはならない。だから補修作業時油槽に十分冷却できる油量がなく、付着油だけになっていても、上部のシューターから300℃の高温物体が落下しても事故が起こらないと思い込んでいた。清掃時にシューターと油槽とを仕切る設備を設けるか、十分に炉とシューターの温度が下がるまで、油槽の油を抜かないといった運転マニュアルの改訂が必要であろう。 |
よもやま話 |
☆ 焼入油は通常の使用が高温の物体と接触して使っているせいか、安全と思われている節がある。実際はやはり炭化水素油であり、取り扱いを間違え、火災になっているケースが目立つ。 |
データベース登録の 動機 |
焼入油残油の火災の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、慣れ、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、誤判断、状況に対する誤判断、計画・設計、計画不良、工事計画不良、定常動作、危険動作、危険状態のまま立ち入り、不良現象、化学現象、表面積大で酸化されやすい状態、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.31、22-223
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物的被害 |
煙により屋根,内壁890平方mが煤ける.熱処理炉の本体,付属品の一部焼損. |
被害金額 |
1463万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.概要図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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