事例名称 |
バネ製造工場焼入油槽のショートによる火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年10月25日 |
事例発生地 |
東京都 江東区 |
事例発生場所 |
自動車部品工場 |
事例概要 |
バネを焼入する装置で,挿入装置のコンベアで赤熱した自動車用コイルバネを焼入油槽に投入した際,火炎が異常に高く上がり消火器で消火した。このときの火炎により,コンベアの電気配線が短絡寸前の状態に損傷したが,十分な機器の点検をせず、損傷を発見しないまま再稼働させた。再稼働の最初のバッチで、コイルバネが焼入油槽に完全に没する前(油面から上部8cm出た状態)に,配線が短絡してコンベアが停止し、高温のコイルバネにより油面が加熱されて発生した焼入油の蒸気が着火し,火災となった。 |
事象 |
バネを焼入する装置で,挿入装置のコンベアで赤熱した自動車用コイルバネを焼入油槽に投入した際,火炎が異常に高く上がり消火器で消火した。通常の作業では約1mの火炎があがり、コイルバネが、完全に液面に没した時点で火炎が消える。このときは、自動的には消火しなかった。そのまま次のバッチの処理を開始した。コイルバネが焼入油槽に完全に没する以前に、配線が短絡してコンベアが停止した。高温のコイルバネにより焼入油表面が加熱され,焼入油の蒸気が発生して着火し,火災となった。図2参照 |
プロセス |
使用 |
物質 |
焼入れ油 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
バネを焼入する装置で処理材を入れた時、通常の作業時より大きな炎を出した。消火器で消火した。 次に処理材を入れた時に、処理材は焼入油上8cmのところで止まった。同じように火を出した。炎は消えず、火災になった。 |
原因 |
消火器を使用して消火した時に、コンベアの電気配線を損傷させた。そのまま次のバッチの作業を行ったので、電気故障を起し、途中で処理材の移動が止まった。炎が大きいという異常現象が起こった時に十分な点検を行わなかった。作業の遅れが気になって十分な点検が出来ないで次の作業に移ったと思われる。 |
対策 |
1.焼入油の使用に当たっては、必ずしもその危険性を認識していないことが多い。危険物使用に対する安全教育を徹底すべきである。 2.防火管理、整理、清掃は重要である。 |
知識化 |
異常が発生した時は、その原因があり、その上、異常現象の結果で通常とは変わったことが起こっている可能性がある。異常時の後は、運転再開を急ぐより原因や異常の影響を確認することが、次のより大きな異常を生じさせない要点であろう。 |
背景 |
1.焼入油は引火点が高く安全ではあるが、加熱されれば蒸気を生じ、火災になる。 2.異常が起こったときに十分な点検をせず、装置の故障を見落とした。運転管理、設備管理が配慮不十分と考えられるであろう。 |
データベース登録の 動機 |
異常現象の後、確認もせずに再稼働して火災になった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、使用、運転・使用、機器・物質の使用、誤対応行為、連絡不備、機能不全、ハード不良、機械不作動、不良現象、化学現象、燃焼、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接被害1200万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.35、252-253
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物的被害 |
屋根裏40平方m焼損,焼入油装置焼損,焼入油200L焼損. |
被害金額 |
1145万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.焼きいれ挿入装置図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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