事例名称 |
自動車製造工場塗装ブースにおけるアースの不良によるペンキ火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年11月11日 |
事例発生地 |
愛知県 名古屋市 港区 |
事例発生場所 |
自動車工場 |
事例概要 |
自動静電塗装機下部のグレーチング(金属製すのこ)を移動した際,アースが不良になった。運転再開前に点検しなかったので、アース不良を発見できなかった。そのため、グレーチングに静電気が蓄積した。自動静電塗装機による塗装を再開後、付近のアース体との間で静電気火花が発生し,塗料等の蒸気に着火(推定)し,スプレーガンから出火し、火災となった。約2時間後鎮火した。 |
事象 |
自動静電塗装機下部のグレーチングを作業の都合上移動した。この時、アースが不良となり、グレーチングに静電気が蓄積した。自動静電塗装機による塗装を再開したら、塗装ブースが火災になった。2時間後鎮火した。 |
プロセス |
使用 |
物質 |
塗料(paint) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1. 自動静電塗装工場で作業場の模様替えのため、塗装機下側のグレーティングを動かした。 2. 自動塗装機による静電塗装を再開した。 3. スプレーガンから出火し、塗装ブースが火事になり、全焼した。 |
原因 |
1.グレーチングを移動した時に、アースが不良となった。移動終了後にアースの確認を忘れたため、それに気付かずに、アース不良のまま塗装を開始した。 2.そのため、静電気が塗装機の一部に帯電し、塗料蒸気が静電気によって着火した。 3.静電塗装機の作業員は、油性ペンキなどがトルエンなどの危険物、可燃物が使われていることを理解していない。そのため移動後の運転再開前にアースの点検・確認をしていないように見える。 |
対策 |
1.アースを十分にとる(機器管理)。 2.作業環境の整備をする(防火管理)。 3.塗装中といえども危険物蒸気が余り生じないようにする。 |
知識化 |
油性塗料は軽質有機溶剤に溶解された顔料や粘着剤などからなっている。当然軽質溶剤を取り扱うのと同等の設備や方法が必要である。 |
背景 |
1.何故アースを取っているか関係者は理解していなかった。 2.塗装時における危険物を使った危険作業を理解していない。 3.作業員に対する危険物取扱い、静電気の危険性などの教育・訓練が不足していたか、管理側も危険物を取り扱っている意識の欠如か、危険物に対する無関心があったであろうと推測する。 |
よもやま話 |
☆ 保有空地内に製品等が放置されていたために消防活動に支障をきたした。 ☆ 保有空地内に物が置かれることは日常良くあることであるが、防火管理者がそれを指摘して直させるかどうかは防火意識によって決まる。 |
データベース登録の 動機 |
設備の模様替え後にアースの点検を忘れた例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、使用、運転・使用、機器・物質の使用、非定常行為、変更、作業場所模様替え、不良現象、電気故障、絶縁、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額2.2億円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.36、294-295
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物的被害 |
上塗ブース225平方mのうち180平方m全焼,車両8台,ブース周辺機器一部焼損.塗料類,シンナー焼損. |
被害金額 |
2億2200万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.設備等の概要図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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