失敗事例

事例名称 製鉄所中径管工場塗装設備に溜まったペンキかすの火災
代表図
事例発生日付 1988年02月03日
事例発生地 神奈川県 川崎市
事例発生場所 製鉄所
事例概要 製鋼工場の鋼管塗装ラインの塗装機で火災が起こった。塗装機内部に堆積した塗料かすの蓄熱発火の可能性が高い。塗装かすの発火危険性に対する意識が低いことと、内部の多量の塗料かすを放置してきた現場管理が原因と推測される。
事象 製鋼工場の鋼管塗装ラインの塗装機内部で火災が発生した。塗料は亜麻仁油を含むフェノール樹脂で、この塗料かすが塗装機内に大量に蓄積し、局所排気のフィルターにも多量付着していた。図2参照
プロセス 使用
物質 フェノール樹脂(phenolic resin)
事故の種類 火災
経過 製鋼工場の鋼管塗装ラインで、食事のため塗装作業員が現場を離れた。その後職長が塗装機内で火炎の発生を検知し通報と同時に避難した。
原因 塗装機内部に堆積した塗料かすがローラー下部に埋没するまであったので、その摩擦熱で着火したか、フィルターに付着したカスの酸化反応で発火したかの何れかと考えられる。
対処 ハロン消火器による消火
対策 塗装機内部のコンベアーなどで塗料カスが堆積しにくい構造とした。 塗装装置の清掃作業頻度を高め、フィルターの交換も行うこととした。
知識化 塗料かすによる火災はたびたび発生するが、危険性に対する認識が低い。被害金額が大きくなることを銘記すべきである。
背景 設備管理の不十分が最大であろう。塗料かすは可燃物であり、そのことは運転員にも十分理解させておく必要があろう。塗料かすは中に空気を含んでいるであろう思われ、フィルター等に付着すれば空気との接触面積も大きくなり、酸化されやすいであろう。それを大量に蓄積するまで放置した、教育不足あるいは現場管理が要因であろうと推測する。
よもやま話 ☆ 塗装機の塗装かすの火災危険に対して、水洗式ブースが最も安全だが,水処理が必要となる。乾式ブースではフィルターの交換周期の短縮や不燃性素材の使用,温度モニターなどが望ましい。また,使用する塗料により蓄熱発火性には相違があり、事前の危険性把握も必要である。
データベース登録の
動機
蓄熱発火の典型的事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不足、無知、知識不足、思い込み、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、運転・使用、機械の運転、定常動作、不注意動作、清掃不足、不良現象、化学現象、発熱・発火、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額4600万円
情報源 川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1989)
物的被害 塗装装置、塗装後面テーブル焼損。昇降装置のエアー配管と装置天井、壁及び塗料カスが焼損。特に内部は塗料が氷柱のように垂れ下がり、床部分は約5cm程度堆積し、又ローラーコンベアーと軸受けフレーム上は隙間がない程堆積し、いずれも黒く固化し焼損。
被害金額 4600万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料)
マルチメディアファイル 図2.塗装設備図
備考 定常作業
分野 化学物質・プラント
データ作成者 若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)