事例名称 |
ガスタービン発電所発電設備の灯油供給ポンプ吐出ベント弁取付け部から灯油の噴出 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1988年02月22日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
発電所 |
事例概要 |
ガスタービンに燃料を送るポンプ吐出の、空気抜き配管が破損し、灯油4000Lが噴出した。そのうち500Lは排水溝を経て運河に流出した。配管が破損する可能性個所を予測して漏洩しても構外に拡散しないようにする。また,ガスタービン設備に油検知機を設置した。 |
事象 |
発電用ガスタービンに燃料を送るポンプ吐出の、空気抜き配管が破損し、灯油4000Lが噴出した。そのうち500Lは排水溝を経て運河に流出した。図2参照 |
プロセス |
使用 |
物質 |
灯油(kerocene) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1981年1月 当該の発電設備が完成した。 1987年9月~10月 定期点検を行った。 11月1日 運転を開始した。 運転は毎日5時から24時までの間欠運転である。 1988年2月22日 平常運転中に突如燃料灯油供給量が大幅に上昇した。 点検したところ、灯油供給ポンプの吐出線の空気抜きバルブの本管との接続部から灯油が霧状に噴霧していた。 取付け部のねじ込み部が破損していた。 漏洩量は4000Lで、そのうち3500Lは発電機下部のピットに溜まり, 500Lが運河に流出した。 |
原因 |
空気抜き配管の取り付けのねじ込み部が、振動による繰り返し応力により疲労破壊した。振動を受けた理由は、取り付け位置が、送油ポンプ近傍でポンプの回転などに起因する振動がある箇所にも拘わらず十分な対策が取られていなかった。 |
対処 |
発電機緊急停止。オイルフェンスで拡散防止。油処理剤を散布。 |
対策 |
1.空気抜き配管の位置を変更した。ガスタービン設備に油検知機を設置し、廃水設備経由に変更して直接構外へ出ないようにした。 2.他の類似箇所についても総点検を実施した。 |
知識化 |
1.構内で有害物が漏れても、環境中への排出がないような設備構造が必要である。 2.小さな振動でも長期的には疲労を起こさせることがある。 |
背景 |
1.何故ねじ込み接続を行ったか。圧力30気圧の灯油配管に対して避けるべき選択だと考える。ねじ込みはねじ部の厚みが薄くなる、溶接に比べ洩れやすい等の欠陥があり、使用を推薦できるものではない。 2.呼び径14mmの配管を使用している。小口径配管ほど全体の強度が減少してくるが、ポンプのベント孔などでの14mmの選択はあるが、配管については石油精製、石化などでは採用しない。 3.サポートが不足している。配管部の負荷に関して事前評価が不足していたと言える。とは言えこのようなベント配管で1箇所ずつ事前評価はしない。設計基準の問題であろう。 |
よもやま話 |
☆ 配管に設置されたベント弁(空気抜き弁)やドレン弁は数も多く、要求される処理流量も多くはないので、日本の石化や石油精製では20mmのバルブが選択されることが多い。海外の大手石油精製、石化では強度面から50mmを選定しているところもある。 |
データベース登録の 動機 |
プラントでの小部品の選択でも重要な影響を与えることを認識させる事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、仮想演習不足、回転機の振動の影響、組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、運転・使用、機器の運転操縦、不良現象、機械現象、振動、破損、破壊・損傷、疲労破壊、二次災害、環境破壊、海域へ流出
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情報源 |
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.53-55
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1988)
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物的被害 |
空気抜き配管折損。灯油約4000L |
被害金額 |
9万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
社会への影響 |
灯油500Lが田辺運河に流出,オイルフェンスで防止し油処理剤散布 |
マルチメディアファイル |
図2.燃料ポンプバイパス回り概略図
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備考 |
定常作業 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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