事例名称 |
クロロスルホン酸屋外タンクの加圧による破裂 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1988年08月22日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
油槽所 |
事例概要 |
1.クロロスルホン酸液を船から加圧法でタンクに受け入れていた。受け入れが終了した頃、タンク上部付近が破損開口しガスが噴出した。 2.作業を担当者の感覚に依存していたため、船側・陸側の2ヶのバルブの閉止が遅れ,圧送用空気の遮断が遅れたため、タンク内が加圧状態になった。船、タンク双方で送液状態を監視する。送液圧力の変化を検知する、遮断するというシステムの二重化をはかることとした。' |
事象 |
クロロスルホン酸液を、船に積載した空気圧縮機を使用して船のタンクを加圧して陸上のタンクに受け入れていた。受け入れが終了した頃、タンク上部付近が破損開口し、ガスが噴出した。図2参照 |
プロセス |
貯蔵(液体貯蔵設備出荷・受入) |
物質 |
クロロスルホン酸(chlorosulfonic acid)、図3 |
事故の種類 |
破裂、漏洩 |
経過 |
8月22日14:10 陸側の担当者は受入れ配管のバルブの開閉準備を始めた。 14:30 クロルスルフォン酸を積んだタンカーが着桟した。 14:40 クロロスルホン酸のタンクへの荷揚げを空気加圧にて開始した。 17:00頃 荷揚げ終了した。その頃、「ボン」という音とともに、クロルスルフォン酸タンクから白い蒸気様のものが出ているのを認めた。 事務所から現場に駆けつけた者が、タンクが開口し、ガスが噴出しているのを確認した。 |
原因 |
船上げ配管ラインの船側元弁及び陸側第1弁を閉めるのが遅れ、圧送用空気が、コーンルーフタンク内に流れ込んだ。僅かに加圧状態になり、耐圧の弱い屋根と側壁の接続部が開口した。弁を閉める作業は、陸と船間の荷上げ用ホースに空気が入ったのを船側で確認して、陸と船でそれぞれの担当する弁を閉めることになっていた。なお、その前段階として船倉の液量が5m3を切ったら空気圧縮機は停止する。ただし、圧送圧力が4.6kg/cm2Gなので、バルブ操作が遅れれば陸側タンクの圧力上昇は避けられない。 |
対処 |
陸側タンクの内容物を移送した。 |
対策 |
船、タンク双方で送液状態を監視する。送液圧力の変化を検知する、遮断するというシステムの二重化をはかる。 |
知識化 |
コーンルーフタンクは正側も負側も耐圧はない。わずかの圧力で壊れると考えるべきである。そこに空気圧で圧送するのだから、間違っても加圧用空気をタンクに送り込まない、噴出をさけるため安全システムの多重化が必要である。 |
背景 |
1.移送中止、バルブ閉止の判断・指示が船側担当者の感覚だけであった。 2.基本的にはコーンルーフタンクの耐圧は殆ど”0”であり、空気圧縮方式の移送は危険なことを理解していなかったであろうと推測される。 |
よもやま話 |
コーンルーフタンクはタンクの完全な破壊を避けるため、タンク天板と側壁との接続部を弱くしている(放爆構造)。言ってみれば帽子を載せているだけなので、高々100mm水柱程度の圧力しか持たない。大気を加圧して圧送により荷下ろしをするのは、最初から危険覚悟の装置、操作である。できるならポンプ使用にすべきであろう。 |
データベース登録の 動機 |
運転管理の不十分さが引き起こした典型的な事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、経験、勉学不足、計画・設計、計画不良、設計不良、定常操作、誤操作、操作の遅れ、破損、大規模破損、破裂、二次災害、損壊、漏洩
|
|
情報源 |
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.230-232
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1988)
|
物的被害 |
油槽タンク破裂。タンク屋根は全体的にふくれ、溶接線は亀裂・開口し大きく変形。タンク屋根板と側板の溶接継手部一部破損開口、タンク屋根板及び側板一部変形。クロルスロフォン酸若干漏洩 |
マルチメディアファイル |
図2.装置図
|
図3.化学式
|
備考 |
定常作業 |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|