事例名称 |
無水フタル酸化成器の蒸気発生細管の開孔により高圧蒸気が溶融塩側に入り溶融塩の飛散、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年11月15日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
無水フタル酸反応器の冷媒である溶融塩容器内の溶融塩が噴出した。溶融塩を冷却する水蒸気の発生部細管の一部がエロージョンで破れ、水蒸気が溶融塩容器に入って噴出を招いた。破損した部分の熱交換器設計が不十分で肉厚が低下する箇所があった。 |
事象 |
無水フタル酸反応器の加熱源である、溶融塩容器内の溶融塩が噴出した。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
酸化 |
物質 |
硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム)(nitrate) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
オルトキシレンを酸化して無水フタルを生成する反応器の温度の異常警報が突如鳴った。反応器上部から冷媒の溶融塩が噴出し、若干の火炎も発生した。 なお、発災した反応器のソルトクーラー部は1979年から使用を開始した。1989年5月にピンホールが認められ、新規設計のものに発災年(1990年)12月に交換が予定されていた。 |
原因 |
溶融塩を冷却する蒸気クーラーの一部がエロージョンで破れ、蒸気が溶融塩容器に入って噴出を招いた。蒸気の圧力は2.8MPaGであり、溶融塩側はほぼ常圧である。 |
対処 |
緊急使用停止 |
対策 |
1.ソルトクーラーの材質変更を行った。 2.ソルトクーラーの点検項目、周期を定めた。 |
知識化 |
熱交換器の細管流速には最適範囲がある。その中に特殊な工作をしたら、影響が出ることは予測可能であろう。まして、気液混相流であるので、ミストによるエロージョンには注意が必要である。特殊なことを実施する場合は、設計時点から十分な検討が要る。 |
背景 |
発災した反応器は、構造が複雑な複合型熱交換器である。熱交換器の胴側を2重円筒にし、外筒側に酸化反応用の細管を、内筒側に除熱用の蒸気発生用細管を配置した。溶融硝酸塩を循環させ、外筒側では酸化反応の除熱に、内筒では細管内で水蒸気発生させ胴側の硝酸塩を冷却する(そのため、反応器の内筒部をソルトクーラーという)。蒸気発生用水の不純物蓄積防止用のブロー管を細管内から取ったので、その蒸気発生細管のブロー管部分だけ流速が大きすぎ、蒸気側のエロージョンで細管が開口した。熱水と水蒸気の混相流であることも考えられる。圧力の高い蒸気が溶融塩側に洩れ込んだ。熱交換器の設計ミスと言えるであろう。 |
データベース登録の 動機 |
設備設計不備の典型的な事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、熱交チューブのエロージョン、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、保守・修理、点検不足、不良現象、熱流体現象、エロージョン、二次災害、損壊、漏洩
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1991)
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物的被害 |
溶融塩約4トン噴出、7号化成器計装ケーブル等若干焼損 |
マルチメディアファイル |
図2.装置図
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備考 |
定常作業 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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