事例名称 |
製油所排水タンクに着火性硫化鉄が発生してマンホールの開放時に火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年04月15日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
製油所の排水処理施設の定期点検で、排水タンクの上部マンホールを全開にした後、側板のマンホールの蓋をつり上げたところ爆燃が生じた。マンホール部やタンク内壁に発火性の硫化鉄が生成していて、マンホールの開放で発火して、発生していた硫化水素に着火、炎がマンホールから噴き出して、作業員が多数火傷を負った。 |
事象 |
製油所の排水処理施設の定期点検で、排水タンクの上部マンホールを全開にした。側板のマンホールを開放した後で、火災が生じた。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
廃水・廃油処理 |
物質 |
排水(waste water) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
排水処理施設の排水タンク清掃のため、上部マンホールを開とした。引続き側板のマンホールの蓋を引上げ内部の液体残量を確認した。蓋を元に戻した。マンホール内部からゴーという音がしたので、避難を始めたところ数秒で側板のマンホールから火炎が吹き出した。 |
原因 |
マンホール部に発火性の硫化鉄が生成していて、マンホールの開放で発火して、発生していた硫化水素に着火、マンホールから噴出した。硫化鉄はマンホールだけでなくタンク内壁にもあり、マンホールの開放で空気が侵入し着火した。 |
対策 |
1.開放手順のマニュアルを作成 2.点検時に硫化鉄を処理するためウオータージェットでスラッジを崩すなどの対応をとる。 |
知識化 |
硫黄や硫化水素の存在が考えられる湿潤な系では、硫黄存在時の発火、燃焼危険性、硫化水素の発生など危険性の事前検討が重要である。閉所のメンテナンスでは酸欠を含め内部物質の事前チェックを行う必要がある。 |
背景 |
排水には硫化水素の存在が確認され、鉄(タンク材)と水分があるので、発火性硫化鉄が生成していた。そこにタンク開放で空気が流入してきたため、発火し、タンク内の硫化水素に着火、炎がマンホールから噴き出した。内部成分を資料文書やガス検知によって事前に調べることをしなかった。排水は、プロセスで接触してきた様々な化学物質を溶解している。それがタンク内で各種の化学反応を起こしたり、蒸発して気相に入ったりしている。その危険性を理解していない。 |
よもやま話 |
☆ 排水タンクは危険である。各種の炭化水素、薬品、硫黄などが混入した雑多な混合物になる。 |
データベース登録の 動機 |
発火性物質の生成を予測できなかったことによる典型的な事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、経験不足、使用、廃棄、排水中のガス分離、計画・設計、計画不良、タンク開放計画不良、不良現象、化学現象、燃焼、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、負傷者6名
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1996)、p.264
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1995)
消防庁、危険物に係る事故事例-平成7年(1996)、p.25、276-277
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負傷者数 |
6 |
物的被害 |
板金用薄板ロール、防水シート等焼損.タンク本体の塗装一部焼損及び計器室の壁面約5平方m並びに保温作業資機材若干焼損. |
被害金額 |
約300万円(危険物に係る事故事例),約230万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.タンクまわりフロー図
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備考 |
点検 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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