事例名称 |
ABS樹脂製造の効率化目的の工事の結果、粉末発生量が増えたことによる粉末樹脂の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1984年06月30日 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ABS樹脂の粉体乾燥中、乾燥室、バケットエレベータから黒煙が発生した。2ヶ月前に改造した乾燥機の粉末発生量が多かったのと、発生粉末をバケットエレベータ入口で戻したため粉じん濃度が上がった。それにもかかわらず何の対策も取らなかった。粉体は潜在的に爆発の危険性を有するため、粉体生成量が少ない設備に変更する。 |
事象 |
ABS樹脂は反応などの結果得られた状態では湿粉状態であり、押出機でペレット化する前に水分1%以下まで乾燥する。乾燥機を省エネルギーのため、別の形式のものに交換したところ、運転中に乾燥室とバケットエレベータから黒煙が発生した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
乾燥 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
ABS樹脂(ABS plastics) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1984年4月 乾燥機を圧搾脱水機に変更した。 この結果発生する樹脂粉末量は増えていた。粉をバケットエレベータに戻していた。 6月30日19:15 運転中に火災報知器が鳴った。確認したら、乾燥室、コンベアから黒煙が発生していた。 20:30 放水消火により鎮火 |
原因 |
脱水乾燥したABS樹脂を押出機に移送するバケットエレベータ部で発生した静電気により、ABS樹脂粉体に着火、燃焼した。 |
対処 |
注水消火 |
対策 |
1.粉体生成量が少ない脱水成型機に変更する。 2.バケットエレベータに替えて、窒素による気体輸送設備に変更した。 3.同種事故に備えて緊急停止および消火活動が迅速に出来るよう遠隔操作化する。 |
知識化 |
粉体は固有の危険特性を有する。それに対応した危険回避を考慮する。 |
背景 |
1.省エネルギー目的の改装により圧搾脱水機を導入したため、粉じん発生量が増加した。さらに発生した粉末をバケットエレベータ入口に戻したため、粉末濃度が上がった。粉じん爆発や粉体燃焼の危険性が増大したが、着火源となる静電気対策が不十分であった。 2.改造結果にこだわり、粉末が増えているのに何ら手を打たなかった。粉末の怖さに対し少し無関心であったと推測される。 |
よもやま話 |
☆ 異常事態が生じた場合、応急措置後すぐに運転を再開しないほうが良いことがある。なにが起こったかがわからない場合がそれにあたる。 |
データベース登録の 動機 |
改造工事結果で悪くなったところを放置して起こった事故の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、不都合点の洗い出し不十分、計画・設計、計画不良、バランスの取れていない設計、非定常行為、無為、結果の不都合に目をつぶる、不良現象、機械現象、粉塵発生増大、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.154-155
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備考 |
定常操作 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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