事例名称 |
常圧蒸留装置の定期点検修理中、バルブ操作ミスによる水素の混入で空気式熱交換器の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年07月08日 |
事例発生地 |
宮城県 仙台市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
常圧蒸留装置の定期修理終了後、 搭頂熱交換器付近で漏洩を発見し、窒素封入をしながら修理した。 カバー取り付けのため電気式レンチを使用したところ火災となった。 火勢が衰えないため窒素供給システムを点検した。窒素配管と脱硫装置のプロセスガス配管とのバルブが開になっていた。 定期修理で使用した窒素配管と可燃性ガス配管が常時接続されていたため、接続バルブの誤開放で可燃性ガスが窒素配管に流入した。火気使用作業での可燃性ガスの検知を徹底する必要がある。 |
事象 |
常圧蒸留装置(ADU)の定修工事の最終段階の気密テスト時に、ADU主蒸留塔の搭頂熱交換器のチューブ取付部の洩れが判明した。窒素ガスを封入しながら補修を終わらせた。カバーの復旧のボルト締めをインパクトレンチではじめた時、突如火災になった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
水素(hydrogen)、図3 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1987年7月4日 隣接する脱硫装置の定期修理工事が終わり、窒素パージを行った。 7月5日 ADUの定期修理が終了した。 7月8日 10:00 ADUの気密テスト開始し、スチームで加圧した。 11:40 塔頂熱交換器付近で漏洩を発見した。熱交換器に窒素を封入しながら減圧し、さらに漏洩の補修をした。 16:40 漏洩の修理が終了した。 17:45 熱交換器カバー取り付けのため電気式レンチを使用して、ボルト締めをはじめたところで、火災になった。 18:20 火勢が衰えないので窒素ガス供給システムの再点検を行った。 18:40 窒素ガス配管と脱硫装置のリサイクルガス圧縮機部で窒素ガス配管とプロセスガス配管の連絡部バルブが開いていることを見つけ、ダブルバルブを閉にした。 18:55 鎮火を確認した。 |
原因 |
搭頂熱交換器に供給していた窒素ガスに、脱硫装置の可燃性ガスが混入していた。連絡の不徹底で、すでに運転を開始していた脱硫装置の水素配管と窒素配管の連絡弁を開放したままだった。そのため圧力差で水素ガスが窒素に混入した。 |
対処 |
注水消火 |
対策 |
1.窒素配管に逆止弁を設置する。 2.可燃性ガスと接続する窒素配管は使用のたびに接続するかダブルブロック&ブリーダーのバルブの開閉を徹底する。 3.業務引継の連絡事項の見直しをする。 4.協力会社社員へもガス検知、火気使用作業の教育を行う。 ダブルブロック&ブリーダー: 直列2基の仕切り弁の中間に外部放出用の小口径バルブ(ブリーダー弁)を設ける。ブリーダー弁を常時開または定期に開にして漏洩の有無を確認する。 |
知識化 |
複数の目的のための複数の配管が連結されていると、誤開放による事故が起こりやすい。とくに用役配管がプロセスに接続してある場合に事故が起こりやすい。十分な教育と管理が必要である。 |
背景 |
1.脱硫装置側のパージ用窒素配管とプロセスガスが2箇所で接続している。作業者が自分の判断でそのどちらかを使っていた。また、隣接するADUで火気工事を伴う工事に窒素を使っている連絡がなかった。そのため、脱硫装置の運転開始で発生したガスが、圧力差で窒素配管に流入し、電動レンチの火花で火災になった。 2.交替者間の連絡ミスが原因となっているが、2つある窒素ガスとプロセス配管の連絡配管の使用法を明確に決めていなかった運転指示書か、あるいは指示されていることを無視したかも知れない教育の何れかが、真の要因であろう。それよりも、隣の装置に既に可燃物が入っているという緊張感がなかったことが最大の原因とも考えられる。 |
よもやま話 |
☆ 接続したり切り離したりする配管では、ダブルブロック&ブリーダー構成を取ることがある。仕切板を挿入して完全な縁切りをするか、必要時だけ仮設で接続する方が安全上は望ましい。 |
データベース登録の 動機 |
点検作業中の典型的な事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、作業者不注意、組織運営不良、運営の硬直化、情報連絡不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良(バルブーケで縁切り)、不良行為、規則違反、安全規則違反、計画・設計、計画不良、設計不良、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、負傷2名
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1988)、p.100-101
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100(1991)、p.13-14
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.21-26
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負傷者数 |
2 |
物的被害 |
空気式熱交換器に付属する配管に軽微な焼損 |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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備考 |
修理 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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