事例名称 |
ピクラミン酸ナトリウム取扱い中のわずかな刺激による爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1964年02月06日 |
事例発生地 |
広島県 福山市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
脱水分離した木樽入りのピクラミン酸ナトリウムを、スコップで別の木樽に移す作業中に爆発し、周囲のものを類焼して1階全体に火災が広がった。着火源は木樽上部の金具と別の木樽の鉄帯の衝突による火花、あるいは樽内部に突き出ていた数本の釘の静電気帯電による放電が考えられる。火薬類のような鋭感な物質を取り扱う基本的な知識が欠けていたと考えられる。 |
事象 |
脱水分離した木樽入りのピクラミン酸ナトリウムを、スコップで秤量器上の収納袋に入れる作業をしていた。ほとんど無くなった木樽の残りのピクラミン酸ナトリウムを別の木樽に移す作業を行っていたときに、ピクラミン酸ナトリウムが爆発し、瞬時に燃え広がった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溜出・取出し |
物質 |
ピクラミン酸ナトリウム(sodium picramate)、図2 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1. 脱水分離した木樽入りのピクラミン酸ナトリウムを、スコップで秤量器上の収納袋に入れる作業をしていた。 2. 残量が少なくなり、樽の底が見えてきたので、木樽を抱えて残りのピクラミン酸ナトリウムを別の木樽に移す作業を行っていた。 3. そのとき、ピクラミン酸ナトリウムが突然爆発して瞬時に燃え広がり、急速に類焼して火炎が1階一面に広がり、3名が死亡、4名が負傷した。 |
原因 |
1.木樽を抱えてピクラミン酸ナトリウムを別の木樽に移す作業を行ったので、樽上部の金具と別の木樽の鉄帯がぶつかり火花が生じ、着火したものと推定されている。 2.樽内部に突き出た数本の釘に静電気が帯電して、放電した可能性も考えられる。 |
対策 |
1.作業方法の改善 2.鋭感な物質の取り扱いに関する教育・訓練 3.ピクラミン酸ナトリウムの発火危険性について十分検討する。 |
知識化 |
1.火薬類のようなエネルギー物質を取り扱う作業では、重量物を抱え上げる等の不安定となるような、あるいは無理な作業は行わない。 2.鋭感なエネルギー物質の取り扱いに用いる器具等は鉄のような硬い物質を露出させないようにする。 |
背景 |
1.乾燥したピクラミン酸ナトリウムは鋭感であり、このような危険な物質を取り扱う場合は細心の注意が必要である。しかし実際は、事業所および従業員が火薬類のようなエネルギー物質を取り扱うための基本的な知識が欠けていたように考えられる。たとえば鋭感な物質を取り扱うための器具には鉄のような硬いものは露出しないようにすることが常識である。 2.ピクラミン酸ナトリウムの発火危険性に対して十分検討していなかったことが推定される。 |
データベース登録の 動機 |
鋭感な物質が小さな刺激で着火した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、経験・学識不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、小分け作業の計画に無理、定常動作、危険動作、ふらつき、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、火災、身体的被害、死亡、3名死亡、身体的被害、負傷、4名負傷
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情報源 |
日本火災学会化学火災委員会、化学火災事例集(2)(1974)、p.78
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.74
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死者数 |
3 |
負傷者数 |
4 |
被害金額 |
約142万円(反応危険 -事故事例と解析-) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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