事例名称 |
p‐ニトロトルエンスルホン酸反応槽内への水の混入による反応槽の破裂 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1965年01月18日 |
事例発生地 |
東京都 板橋区 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
p‐ニトロトルエンスルホン酸製造装置の反応槽で、105~110℃で反応を行っていた。反応終了後ジャケットに冷却水を流し、約40℃に冷却する操作に入った。ところが、冷却ジャケット排水口のパイプ付近で反応槽内壁に亀裂が生じていたため、冷却水が反応槽内部に侵入して発熱し、反応槽内部の温度が上昇した。そのとき異常音が生じたため冷却水の循環を停止した。さらに反応槽の温度が150℃にまで上昇した。そこで危険を感じて内容物を排出したが間に合わず、反応槽が破裂した。 |
事象 |
p‐ニトロトルエンスルホン酸製造装置の反応槽で、反応終了後冷却用ジャケットに冷却水を流した。異常音が生じたので、冷却水の循環を停止した。反応槽の温度上昇があり、内容物を排出したが間に合わず、破裂した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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反応 |
スルホン化 |
化学反応式 |
図2.化学反応式
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物質 |
(発煙)硫酸(fuming sulfuric acid)、図4 |
p-ニトロトルエン(p-nitrotoluene)、図5 |
p-ニトロトルエンスルホン酸(p-nitrotoluenesulfonic acid)、図6 |
事故の種類 |
破裂 |
経過 |
1. p‐ニトロトルエンスルホン酸製造装置で、ステンレス製のジャケット付き反応槽に発煙硫酸(22%)750kgを仕込み、p‐ニトロトルエン275kg投入して、105~110℃で約1時間反応させた。 2. その後ジャケットに冷却水を流し、約40℃に冷却する操作に入った。 3. 異常音が生じたので、冷却水の循環を停止した。 4. 反応槽の温度が150℃に上昇した。内容物を排出したが間に合わず、破裂した。 |
原因 |
冷却ジャケット排水口のパイプ付近で反応槽内壁に亀裂が生じていたため、冷却水が反応槽内部に侵入し、温度の異常上昇が起こったものと推定されている。 |
対策 |
1.反応器等の機器設備の点検を強化する。 2.運転員の異常時対応の教育・訓練を充実する。 3.機械的な方法で水漏れの起こらない方法を検討するか、あるいは発煙硫酸と接触しても反応しない冷媒を使用することを検討する。 |
知識化 |
1.スルホン化反応では反応容器内に硫酸があり、水が浸入すると発熱して温度が上昇し、暴走反応を引き起こす。 2.一方、反応容器の冷却や除熱に水を使用するが、容器や水パイプの亀裂や腐食によって反応槽内に水が混入する危険性があるので、これを防止するための点検が重要である。 3.できるならば洩れても硫酸と接触しない構造が必要である。 |
背景 |
1.機器設備の点検の不備があった。 2.隔壁が破損したら水と発煙硫酸が直接に接触する構造になっていた。 |
よもやま話 |
☆ この事故例のようにジャケットから絶対に洩れてはいけない場合は、コイルを巻いて保温するとか、別に加熱・冷却用のパネルを作りそれを張りつけるなど行い、2重の隔壁を設ける方が良い。しかし、熱伝達効率は悪くなる。 |
データベース登録の 動機 |
設備・機器の点検不良、および異常反応に対する対策不備の事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、スルホン化反応、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、保守・修理、点検不足、破損、減肉、開孔、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷
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情報源 |
日本火災学会化学火災委員会、化学火災事例集(2)(1974)、p.77-78
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.107
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
反応容器破損 |
被害金額 |
210万円 |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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図6.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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