事例名称 |
DPTの計量用ロータリーバルブの不調時での運転継続による摩擦で爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1972年05月19日 |
事例発生地 |
兵庫県 姫路市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1970年5月19日 ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)製造装置の乾燥部門で乾燥後の製品をホッパーに貯めて計量しているときに、ホッパー上部で火炎が上がり、バグフィルターの部分が爆発した。不具合があり、前日から調整していたロータリーバルブの摩擦熱でDPTの微粉末が発火し、製品ホッパー内のDPTに着火したものと推定された。 |
事象 |
ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)製造装置の乾燥部門では、乾燥後の製品を計量ホッパーに貯めて計量している。計量を行っている時、計量ホッパー上部マンホールで突然火炎があがり、計量ホッパーの入口側にあるバグフィルターが爆発、乾燥部門のエリアがすべて破壊された。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
移送 |
物質 |
N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(N,N'-dinitrosopenta methylenetetramine)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1972年5月18日 バグフィルターから計量ホッパーへの垂直配管部に取り付けられたロータリーバルブが軋む音がした。 19日 ロータリーバルブの調整中を行った。調整中もDPTの製造を続け、製品の乾燥終了後、計量用ホッパーに製品を貯めていた。ホッパー上部のマンホールの近くで火炎があがり、バグフィルターが爆発した。 |
原因 |
爆発までのシナリオは以下のように推定された。 1.ロータリーバルブの軋む音がするため事故前日から調整していた。 2.運転を続けていたため、乾燥されたDPTがロータリーバルブに供給され、その摩擦熱で着火し、さらに、燃焼したDPTがホッパーの中に飛び込んだ。 3.その火でホッパー内に滞留していたDPTが爆発した。 |
対策 |
機器・設備の保全作業を行うときは製造作業を停止する。 |
知識化 |
機器・設備に不具合があるときは、たとえそれが軽微でも製造作業を中止して実施するか、運転継続しながら実施するか広く慎重に検討すべきである。その上でわずかでも懸念すべき点があれば、運転停止をすべきであろう。特にエネルギー物質や軽質の炭化水素では、そのような配慮が重要になる。 |
背景 |
ロータリーバルブがきしんだ音を立てているのは、どこかに無用の摩擦があるからであろう。もし、摩擦部分が粉体の通路部分にあるなら、そこに紛状の固体を供給すれば、摩擦熱が発生するのは当然である。そのことに思い至らずに、ロータリーバルブ経由の供給を続けていたことが、問題であろう。取扱い物質の特性を考えれば、摩擦に対してもっと敏感でなければならない。運転の安全管理が欠如していたと考える。 |
データベース登録の 動機 |
通常通りに製造を進めながら保全作業を行ったために事故となった事例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、誤判断、状況に対する誤判断、不良行為、規則違反、安全規則違反、使用、運転・使用、機械の運転・操縦、不良現象、機械現象、摩擦、不良現象、化学現象、発熱・発火、二次災害、損壊、爆発
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情報源 |
日本火災学会化学火災委員会、化学火災事例集(2)、工業調査会(1974)、p.21
田村昌三、若倉正英監修、反応危険‐事故事例と解析‐、施策研究センター(1995)、p.142
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物的被害 |
乾燥工程破壊 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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