失敗事例

事例名称 攪拌機の停止で発生したホットスポットによる反応槽からの高温液の噴出
代表図
事例発生日付 1974年01月01日
事例発生場所 化学工場
事例概要 硫酸バンド(硫酸アルミニウム)の製造装置の反応槽で、高温液の噴出事故があった。濃硫酸を仕込んだ反応槽に約25tの水酸化アルミニウムスラッジを3時間かけて投入する作業をしていた。その途中で投入を中止し、攪拌機も止めて休憩した。反応熱と硫酸の水による希釈熱で局部的に高温部が生じ、その部分の圧力が上昇して1時間半後に反応槽から高温の反応液が噴出した。4名が火傷を負った。
事象 硫酸バンド製造装置の反応槽で、反応途中で撹拌を停止した。しばらくして高温の反応液が噴出し、4名が火傷を負った。
 硫酸バンド: 硫酸アルミニウムの別称で工業界での用語。10%水酸化アルミニウムスラッジと濃硫酸を反応させて得られる。その用途は水浄化用の沈降材、紙のサイジング材、媒染剤など広い用途で使われている。
プロセス 製造
単位工程 反応
単位工程フロー 図3.単位工程フロー
反応 その他
化学反応式 図2.化学反応式
物質 硫酸(sulfuric acid)、図4
水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)、図5
硫酸アルミニウム(aluminium sulfate)、図6
事故の種類 漏洩
経過 濃硫酸を仕込んだ反応槽に約25tの水酸化アルミニウムスラッジを3時間かけて投入する作業中、約6t投入した段階で攪拌機を止めて休憩した。1時間半後に反応槽から高温の反応液が噴出した。
原因 硫酸バンド生成反応は発熱反応であり、同時に生成する水による硫酸の希釈熱が加わる。攪拌機を停止したため、反応槽内部で局部的に高温部が生じ、その部分の圧力が上昇して噴出したものと考えられる。
対策 1.安全教育・訓練
2.作業標準の整備
知識化 反応中の攪拌停止は事故を引き起こす危険性が高い。
背景 1.作業員の知識不足(撹拌機を停止したときの危険性を理解していなかった)。また、管理者や技術者による教育の不十分も考えられる。
2.作業標準の不備があったと思われる。
データベース登録の
動機
作業従事者がプロセスの危険性を理解していなかったと思われる事故例
シナリオ
主シナリオ 無知、知識不足、勉学不足、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、誤判断、誤った理解、反応進行と危険度の理解、その他の反応、定常操作、誤操作、タイミングを考えない操作、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、漏洩、身体的被害、負傷、4名火傷
情報源 田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.136
負傷者数 4
マルチメディアファイル 図4.化学式
図5.化学式
図6.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)