失敗事例

事例名称 接触改質装置において振動でゆるんだ遠隔制御弁フランジ部からの漏洩による火災
代表図
事例発生日付 1987年10月04日
事例発生地 大阪府 堺市
事例発生場所 製油所
事例概要 1987年10月4日 製油所の接触改質装置で火災が起こった。発災装置の反応制御弁のフランジのボルトの締めつけが若干ゆるかったため、運転中の配管の振動でボルトが徐々に緩み、水素を含む高温の系内ガスが漏洩して空気と接触して自然発火し、火災が発生した。ただちに接触改質装置の緊急停止を行い、他の装置との分離遮断を行った。内圧が2MPa程度に降下した時点で鎮火した。ホットボルティング時の締め付け圧力管理が不十分だったと思われる。
事象 平常運転中の接触改質装置の反応制御弁(図2のRCV-227)で火災が発生し、50cm程度の火炎が生じた。
 接触改質装置: 有触媒、気相反応で環化と脱水素を行って芳香族炭化水素を得る装置であり、反応条件は高温(450℃以上)高圧(3MPa程度)水素濃度数10%で漏洩しやすい環境である。(温度圧力は発災装置の例で、最新技術では圧力ははるかに低い。)
プロセス 製造
単位工程 反応
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
反応 その他
物質 ナフサ(naphtha)
事故の種類 漏洩、火災
経過 1987年10月4日08:40頃、接触改質装置の反応制御弁付近で火災が発生していることを巡回点検中の運転員が発見した。現場の電話で中央制御室に通報した。当直副長が119番通報した。
08:45 装置の緊急停止に入った。まず加熱炉を消火し、原料ポンプを停止、接触改質装置を他の装置と分離遮断を行なった。系内ガスをフレアスタックへ放出し、燃焼処理した。
原因 反応制御弁の取付フランジ部のボルトの締めつけが若干ゆるかった。運転中の配管の振動でボルトが徐々に緩み、水素を含む高温の系内ガスが漏洩した。漏洩ガスが空気と接触して自然発火したものと推定される。
対処 1.巡回点検中に火災を発見した運転員が現場電話で中央制御室に通報した。さらに中央制御室から119番通報した。
2.接触改質装置の緊急停止を行い、他の装置と分離遮断を行い、系内ガスをフレアスタックに放出処理した。火災は系内圧力低下で自然鎮火した。
対策 ホットボルティング要領の改善を行う。
知識化 高温の装置では低温時に締めたボルトの締付け力を維持するため、温度の上昇に合わせてボルトを再び締めるホットボルティングを行う。ホットボルティングの範囲、回数と締付け力の管理を間違えると、漏洩事故が起こりやすい。
背景 工事管理に問題があったと推測される。高温部門でのボルトの伸びを調整するホットボルティングの回数か、締付け力管理方法のいずれかに、あるいは、両方に問題があった可能性が大きい。
 ホットボルティング: 高温設備の昇温時に行うボルトを締め直す作業。増し締め。温度上昇に伴い、機器、配管が熱伸びする。そのため適当な温度間隔を置いて機器や配管のボルトの増し締めをする必要がある。
データベース登録の
動機
作業標準および教育の重要性を示す事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、不注意、注意・用心不足、取扱い不適、使用、保守・修理、ホットボルティング、不良現象、機械現象、振動で緩み、二次災害、損壊、火災
情報源 高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1988)、p.106-107
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例100(1991)、p.16-17
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.62-64
備考 WLP関連教材
・プラント機器と安全-設備管理/配管とバルブの安全
分野 化学物質・プラント
データ作成者 小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)