事例名称 |
重油水添脱硫装置の反応器出口配管への水注入ノズルのエロージョンによる火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1988年05月22日 |
事例発生地 |
山口県 岩国市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1988年5月22日の深夜、製油所の重油水添脱硫装置のフィード/エフルエント熱交換器チューブ側出口配管に設置してある水注入配管が開孔した。反応系の内部流体が逆流して噴出し、火災となった。火勢を鎮圧させ、コントロールして残存している内部流体を燃焼させた。水注入口形状と注入水の増加により、エロージョンが生じたと思われる。 |
事象 |
製油所の重油水添脱硫装置で火災が起こった。同装置の反応器下流の熱回収用熱交換器出口側配管への水注入ノズル部が破れた。反応系の高温内部流体(重油、硫化水素および水素)が噴出し、空気と接触して発火し、火災となった。当装置は減圧軽油を原料として、高温、高圧(9MPa程度)水素雰囲気下で水素化、脱硫と分解反応をさせる。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1988年5月22日23:40頃 重油水添脱硫装置の反応器下流の熱交換器出口配管に設置してある水注入配管が開孔し、反応系の内部流体が逆流して噴出し、火災となった。 23日00:50 火勢を鎮圧し、コントロールして残存している内部流体を燃焼させた。 01:38 消火が完了した。 |
原因 |
1.反応器出口配管への水注入のノズル部がエロージョンとコロージョンの相互作用により配管が急激に減肉して、開孔したものと推定される。 2.重質油のミストを含んだ流体が噴出したため静電気が帯電し、その放電により着火したものと推定される。 |
対処 |
火勢を鎮圧し、残存する内部流体をコントロール下で燃焼させた。 |
対策 |
1.設備の検査、点検基準の見直しを行う。 2.水注入配管の形状および材質の見直しを行う。 |
知識化 |
噴出しているガスの火災は、消火すると未燃ガスが空気中に広がるが、この状態で着火すると蒸気雲爆発を起こすため、供給元を遮断するか残存部を制御して燃え尽きるまで待つ。 |
背景 |
1.水注入ノズルの形状が悪い。3インチ配管の下側から1-1/2インチの配管が接続され、真下から四硫化ソーダ溶液を送り込んでいる。注入口の直上が開口している。 2.1-1/2インチ配管にスケールが付着していたこと、注入水量を増やしていたことで、設計に比べ流速過大になっていたと思われる。 3.水であるということで用心していなかった。 |
データベース登録の 動機 |
水注入ノズルの形状が悪いためエロージョンを起こした例。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、無知、知識不足、過去情報不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、熱流体現象、混相流による腐食、破損、減肉、エロージョン、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1989)、p.138-139
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.46-50
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.32-34
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被害金額 |
約50万円(石油精製及び石油化学装置事故事例集) |
備考 |
水注入の目的:反応の結果、硫化水素、アンモニア、ごく微量のシアン等が生成する。これらの物質による腐食あるいは汚れの防止のため、水が蒸発しない温度まで下がったところで、水またはケミカルを注入する。 WLP関連教材 ・プラント機器と安全-設備管理/配管とバルブの安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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