事例名称 |
酢酸ビニルモノマーの再蒸留で添加剤を全量一気に加えたことによる爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1954年03月14日 |
事例発生地 |
新潟県 鹿瀬町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
粗製酢酸ビニルの再蒸留工程で、本来分割して添加すべき過酸化ベンゾイルを原料と同時に全量添加したため爆発した。プロセス設計の考え方が現在とは異なり、緊急時対応の冷却能力になっていなかった。 |
事象 |
粗製酢酸ビニルモノマーの精製を行っていた再蒸留塔で爆発が起こった。原料と添加剤である過酸化ベンゾイルを同時に投入した。急激な温度上昇とともに、蒸気の噴出が起こり、冷却操作を行ったが、間に合わず爆発し、火災に至った。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
酢酸ビニル(vinyl acetate)、図3 |
過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)、図4 |
事故の種類 |
漏洩、爆発・火災 |
経過 |
再蒸留塔に試料570kg、過酸化ベンゾイル(0.1%)570gを投入した。その時点で、73℃まで上昇していた。20分後にハイドロキノンを投入する予定であったが、投入バルブから蒸気が噴出したため、ハイドロキノンの投入ができなかった。急いでジャケットに冷却水を送った。しかし、蒸気の噴出は止まらず、精留塔が大音響とともに爆発し、工場内に火災が発生した。 |
原因 |
1.過酸化ベンゾイルの投入は何回かに分割して行うことになっていた。それを一度に行ったため,重合反応が起こった。しかも禁止剤のハイドロキノンを添加できなかったため、反応が加速されたものと推定される。指示違反または操作ミスである。 2.緊急時の冷却能力も本質的に不足していた。 |
知識化 |
バッチ装置の冷却能力の設計は難しい。運転初期などの負荷が最大になる時点を予測し、それに対応する能力にする事は最低条件である。考え得る異常な条件に耐えるようにすべきである。 |
背景 |
1.過酸化ベンゾイルの危険性やそれを抑制するハイドロキノンの役割に対する知識不足があった。教育不足が考えられる。 2.冷却能力が定常運転の要求にだけ対応していた。緊急時対応の意識がないので作業指示や運転法が不十分だった可能性がある。 3.余りにも古い事故であり、当時の一般水準から、やむを得ないレベルだったのか。 |
よもやま話 |
☆ 発災が1954年と古い設計であり、当時は冷却能力の考え方も定常運転に対応できればいいと考えられていたかもしれない。 |
データベース登録の 動機 |
ずさんなオペレーションのために起きた事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、誤判断、誤った理解、勘違い、計画・設計、計画不良、設計不良、定常操作、誤操作、誤った操作、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、6名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額約1億円
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.141
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負傷者数 |
6 |
物的被害 |
工場、製品倉庫全焼 |
被害金額 |
1億円(損害保険料率算定会) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/仕込み |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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