事例名称 |
過酸化ラウロイル製造プラント洗浄槽の突然の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1967年09月11日 |
事例発生地 |
埼玉県 川越市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
LPOの製造装置の湯洗用加圧タンク内のLPOトルエン溶液が突然爆発した。不純物やタンク内面のホーローが剥離して露出した鉄面等との接触などが爆発の原因として推定されている。 |
事象 |
過酸化ラウロイル(LPO)製造プラントにおいて、湯洗用加圧タンク内のLPOのトルエン溶液が爆発した。LPO合成の化学反応式を参考のため図3に示す。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
分離 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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化学反応式 |
図3.化学反応式(参考)
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物質 |
過酸化ラウロイル(lauloyl peroxide)、図4 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. ラウロイル酸と三塩化リンの反応でラウロイル酸クロリドを合成し、さらに過酸化水素と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)のトルエン溶液で酸化してLPOを得た。 2. さらに不純物のラウロイル酸ナトリウムを除去するため、洗浄タンクに送り、温水洗浄をした。 3. 水相を分離後、LPOを含むトルエン相をろ過機に移送中、洗浄タンクが爆発した。 |
原因 |
LPOの爆発と見られる。爆発の原因として以下のことが推定される。 1.洗浄タンクの内容物が酸性となり、LPOの分解が促進された。 2.洗浄タンク内面のホーローが剥離して鉄面が露出し、これが触媒となってLPOが異常分解した。 3.洗浄に用いた温湯の温度が高かったためLPOが分解した。 4.原料配合のミスまたは変質があった。 5.異物の混入があった。 |
対策 |
過酸化物の分解防止の一般的な対策であるが、以下のことが挙げられる。 1.温度管理を徹底する。温度上昇を避ける自動システムを採用する。 2.摩擦衝撃等の回避に十分な設備と運転指示書を用意する。 3.金属との接触、不純物の混入を防止する。例えばコーティング部分を損壊させない。 さらには、誤操作防止に必要な処置をするとともに、考え得る異常事態発生時の対応を明確にする。 |
知識化 |
潜在的危険性の大きな物質を扱う際には、特に不純物との異常反応についての事前評価が不可欠である。 |
背景 |
LPOの分解危険性を理解していなかったか、作業員に徹底させなかった可能性が大きいと推測される。過酸化物が分解しやすいことは、製造会社なら当然知っているべきことで、正しい運転指示や設備管理が出来ていたかが問題であろう。 |
データベース登録の 動機 |
有機化酸化物の危険性の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、物性の把握不十分、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、使用、運転・使用、装置運転中に不具合発生、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、反応器大破
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情報源 |
日本火災学会化学火災委員会、化学火災事例集(2)(1974)、p.63
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.64
労働省安全衛生部安全課、バッチプロセスの安全、中央労働災害防止協会(1987)、p.52-53
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
洗浄タンク大破 |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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