事例名称 |
不適切な温度測定で反応を放置したことによるオゾニドの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1969年08月15日 |
事例発生地 |
神奈川県 平塚市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
オゾン酸化でオゾニド化反応を行い、途中で中断した。20時間後に反応を再開したが、反応の終了近くになって爆発が起こった。オゾニドが不安定で放置中に分解し蓄熱していた。温度測定器が壊れていたため、棒状温度計で一時間毎に測定していて、温度状況を把握し切れなかった。 |
事象 |
オゾン酸化によるイソサフロールのオゾニド化反応を、内部温度を3℃に保ちつつ行った。オゾニド生成量が20~25%に達した時点で作業を中断した。20時間後に反応を再開したが、反応終了直前に爆発が起こった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
酸化 |
化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
イソサフロールオゾニド(isosafrole ozonide)、図4 |
イソサフロール(isosafrole)、図5 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. 内容積600lのステンレス製反応器にイソサフロール(150kg)を仕込み、内部温度を3℃に保ちつつ、オゾンを流して酸化反応を行った。 2. オゾニド生成量が20~25%に達した時点で作業を中断し、20時間後に反応を再開した。 3. 反応終了直前に爆発が起こり、反応器の内圧が上昇して反応槽の蓋が300m飛散した。 |
原因 |
反応槽の温度記録計が故障していたため、棒状温度計で1時間毎に反応温度を測定していたが、系内の温度を十分に把握することは不可能であった。そのため、オゾニドの分解熱が蓄熱し、高温部分でオゾニドの分解が暴走的に進行したものと推定される。 |
対策 |
1.発熱の危険が予測される生産では、温度測定が連続的に行えるようにする。出来るならば、温度計の故障や測定値の信頼度を考え温度計は2点以上用意し、温度高警報も必要である。 2.安全維持のための緊急冷却装置、圧力上昇時対応の安全弁等が必要であり、運転マニュアルの見直しや作業員教育が必要である。 3.反応途中で放置する時は、状況に応じた安全対策が必要である。 |
知識化 |
潜在危険性の大きな物質を扱う際には、危険性の把握や、事前評価が不可欠である。と同時に、その評価から得られた作業手順を守る必要がある。 |
背景 |
1.生成物の危険性を把握しないで反応途中で放置した。 オゾニドは、化学的に不安定で、反応槽の中で長時間放置すれば、発熱的に分解が進み、分解生成物としてガスが発生する。オゾニドの危険性を知らなかったとしても、その化学構造式から、安定な物質とは考えにくい。その時に物性等を調査して、正しい取扱い法を把握し、運転員に指示してあれば事故は起こらなかった可能性がある。 2.温度測定の不十分な装置で操業を行う判断をしてはならなかった。反応中止中の反応槽の撹拌はなかったものと思われる。撹拌がない状態で温度を測定しても代表温度ではない。温度計の直近以外の温度は測定不能である。 上記した2点を考えると、管理者側に問題があったと考えられる。 |
データベース登録の 動機 |
物質の危険性に対する基礎知識の欠如のため起きた事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、危険性評価不足、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、反応器破損
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.55
労働省安全衛生部安全課、バッチプロセスの安全、中央労働災害防止協会(1987)、p.46-47
北川徹三、爆発災害の解析、日刊工業新聞社(1980)、p.260-261
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物的被害 |
反応器破損 |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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