事例名称 |
架橋ポリエチレン製造装置で使用開始に先行して系内循環していた有機過酸化物触媒の爆発 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1990年11月18日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1990年11月18日、ポリエチレンから架橋ポリエチレン製造装置の触媒(有機過酸化物)の供給装置で運転中に突然爆発が起こった。異物の混入が原因と見られる。 |
事象 |
ポリエチレンから架橋ポリエチレンを製造する装置で、銘柄変更のため架橋用触媒の変更を開始した。次の運転で使用するジメチルジブチルペルオキシヘキシン(商品名パーヘキシン25B)を溶解タンクとポンプの間で循環中に、運転開始から2時間後に爆発,火災が起こった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.装置図
|
図3.単位工程フロー
|
反応 |
重合・縮合 |
物質 |
2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン-3(2,5-dimethyl-2,5-di-t-butylperoxyhexyne-3)、図4 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1990年11月16日(発災2日前) 前回使用した有機過酸化物をパーヘキシン25Bに置換する作業を始めた。最初に系のジャケットに50℃の温水を通して加温し、前回使用の過酸化物を溶解した。次いで各所ドレン弁等から回収し,最後にパーヘキシン25Bで置換した。置換の終了はドレンからでる液の色で判断した。 18日09:00 パーヘキシン25Bを溶解タンクに投入した。 12:30頃 ポンプを駆動させ,循環を開始。 14:30頃 突然、第2溶解室で爆発と火災がほぼ同時に起こった。 |
原因 |
2次フィルタ内でパーヘキシン25Bが分解,分解ガスによるフィルターの破壊とその際の静電気または自然発火により発火,爆発した可能性が高く,原因は異物の混入と推定された。 |
対処 |
緊急停止 |
対策 |
1.他の有機過酸化物との供給ラインの分離を行う。 2.温度監視,流量監視,自動停止装置等の運転監視の強化を図る。 3.異常反応時の冷却水注入ラインの設置を行う。 |
知識化 |
有機過酸化物のようにたやすく分解し、爆発しやすい物質の取扱いには、濃度や温度、異物の混入など十分な注意が必要である。 |
背景 |
原因は特定できていない。運転管理の強化を検討する。パーヘキシン25Bは自己発熱分解を起こす。 |
データベース登録の 動機 |
有機過酸化物の事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、取扱い不適、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発・火災、身体的被害、負傷、1名負傷、組織の損失、経済的損失、直接被害額2000万円
|
|
情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施策研究センター(1995)、p.159
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.50-52
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.76-77
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1991)
|
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
工場1階部分焼損、原料100kg焼失(反応危険)。鉄骨スレート5階建の外壁面約66平方m破損、パーヘキシン若干焼失。有機過酸化物添加設備内のポンプ、フィルター、槽2基地付属設備一式破損。カーボン倉庫外壁面約30平方m破損、250kg入りカーボン2袋若干焼損(川崎市消防局) |
被害金額 |
2070万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
|
備考 |
自己発熱分解 |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|