事例名称 |
フェニレンスルフィド合成実験中における実験条件の逸脱による発火 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1992年10月01日 |
事例発生地 |
東京都 |
事例発生場所 |
大学実験室 |
事例概要 |
大学の実験室でフェニレンスルフィドの合成中、薬品の滴下速度過大と実験終了前に実験場所から離れたことにより、反応を制御できずに爆発、火災が起こった。反応の危険について事前の評価,教育がされていたかどうかが問題である。 |
事象 |
大学の実験室で、フェニレンスルフィドを合成するために,ジフェニレンジスルフィドとチオアニソールスルホキシドの水溶液に触媒の過塩素酸を滴下する実験を行った。滴下終了後約10分後に爆発した。なお、実験をしていた同じドラフトで250℃を維持する実験が行われていた。 |
プロセス |
研究開発(研究) |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
その他 |
化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
ジフェニレンジスルフィド(diphenylene disulfide)、図4 |
チオアニソールスルホキシド(thioanisole sulfoxide)、図5 |
過塩素酸(perchloric acid)、図6 |
事故の種類 |
爆発、火災 |
経過 |
1.ジフェニレンジスルフィドとチオアニソールスルホキシドの水溶液をフラスコに仕込んだ。 2.フラスコを水、氷、塩を入れたアイスバス中で、冷却撹拌した。 3.70%過塩素酸を液温が40℃を超えないように滴下速度を制御しながら10分間加えた。 4.滴下終了後,実験者がその場を離れた。 5.温度制御不良となり反応が暴走した。 6.爆発,火災が起こった。 |
原因 |
1.過塩素酸の滴下速度が大きすぎた。 2.反応終了前に実験者がその場を離れたため温度制御不良となった。 3.同一のドラフト内で250℃を維持する加熱実験が行われていたために、冷却用の氷が早く溶け、温度維持ができなかった。 |
対策 |
学生(含む大学院生)の実験について基礎教育を行う。例えば 1.実験規律の再確認 2.何故滴下速度が規制されているか等の実験のスキルと理由の説明 |
知識化 |
反応の危険性の事前評価を十分に行う必要がある。実験中に実験台を離れてはいけない。 |
背景 |
最大の要因は、幾つかの実験が並行して行われ、個々の実験の監視、確認がおろそかになっていた可能性があることであろう。例えば、反応の危険と対処法が不適切であり、40℃を維持するために氷で冷却せねばならない実験の隣で250℃維持の加熱をしている。さらに滴下終了と言えども、まだ反応中に実験場所から離れること自体安全意識が不足しており、安全教育にも問題がある。 |
よもやま話 |
☆ ビーカースケールの小型実験では反応温度は一義的にバスの温度で規定されることが多い。そのため、反応熱の蓄積や伝熱について分からないままに実験していたのではないかと思う。 |
データベース登録の 動機 |
大学における事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、調査・検討の不足、事前検討不足、反応危険性評価不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、その他の反応、不良行為、規則違反、安全規則違反、定常操作、誤操作、供給速度過大、二次災害、損壊、爆発・火災
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情報源 |
田村昌三,若倉正英監修、反応危険 -事故事例と解析-、施設研究センター(1995)、p.128
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物的被害 |
実験台焼損 |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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図6.化学式
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備考 |
暴走反応 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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