事例名称 |
残油接触分解技術実証化装置における原料油供給ポンプの停止操作失敗による水素の爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1988年03月18日 |
事例発生地 |
岡山県 倉敷市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
減圧残油の接触分解実証化装置の停止作業中、原料油張込みポンプの吐出圧力を低下させた。そのため、反応系の高圧の水素リッチガスが逆止弁があったにも拘わらず、逆流し、原料油受槽への循環ライン経由で原料油受槽に流入し同槽が破裂火災になった。いくつかのミスが重なった事例である。 |
事象 |
減圧残油を接触分解する新技術の実証化装置で、運転停止作業中に火災が起こった。反応系の高圧の水素リッチガスが原料油受槽に逆流し,冷却油受槽の圧力が上昇し,油が噴出した。さらに原料油受槽が破裂,火災となった。 |
プロセス |
研究開発(開発) |
単位工程フロー |
図2.装置フロー
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物質 |
アスファルト(asphalt) |
水素(Hydrogen) |
事故の種類 |
漏洩、爆発・火災 |
経過 |
1988年3月18日 午前中に運転停止に使用する配管類を重質軽油で置換した。 13:00 直長が作業員2名に原料油張込ポンプの停止を命じた。 13:08 作業員1名が原料油張込ポンプの吐出圧力19MPaを確認,もう1名に原料油受槽への循環ライン弁を開けるように指示した。計測室に報告後,循環ライン弁を開ける操作を開始した。 13:15 吐出側圧力が1.65MPaに低下し始めたので原料油張込ポンプの吐出弁を閉め始めた。 13:16 吐出弁のスピンドルストロークが50%になったときに,冷却油受槽のマンホール付近から油の噴出を発見した。 13:17 計測室に油噴出を報告し,現状確認に向かったところ原料油受槽が炎上した。 |
原因 |
1.反応系の高圧ガスが逆流し、常圧設計の原料油受槽とそれに均圧になっている冷却油受槽から油が噴出した。 2.循環ライン弁の開け過ぎと吐出弁の閉め不足及び逆止弁の内漏れがあった。 |
対処 |
緊急運転停止 |
対策 |
1.循環ライン配管に流量制限オリフィスを設置。 2.逆止弁を変更。 3.逆流検知システムの変更と緊急遮断弁の見直し。 4.情報源資料にはないが、操作基準を改訂すべきである。 |
知識化 |
1.逆止弁は必要な時には止まらないことがしばしばある。逆止弁が利かないことを想定した運転マニュアルが必要である。 2.圧力が高い方から低い方へ流れる、この当たり前のことを忘れてはならない。 |
背景 |
1.高圧ポンプの停止前に循環ラインを使って、吐出圧を維持しながら供給流量をカットするのは基本操作の一つである。そこでバルブの操作順を間違えて、圧力の維持ができなかった。操作の未熟が原因の一つである。この時、運転員は逆止弁が効かないことも想定して作業する必要がある。教育・訓練の不足も感じる。全て人力に頼っていることも、基本要因の一つと思われる。 2.本来的には、バルブの開閉順序が違う。バルブの操作は反応器供給側バルブ(吐出弁)を先に少し閉めて、ポンプの吐出圧が上がったら、循環ラインバルブを少し開けて元の圧に戻す。これを繰り返すべきである。絶対に反応器圧力よりポンプ吐出圧を下げてはならない。 |
よもやま話 |
☆ 吐出側の流量と圧力を保ちながら停止を要求されるポンプでも人力だけに頼らない計装はできる。例えば、循環ラインに調整弁を設け、吐出の全流量を測定し、それが一定になるように循環ライン調整弁を作動させればよい。 |
データベース登録の 動機 |
いくつかのミスの重なりで起こった事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、操作マニュアル不備、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、設計不良、定常操作、手順不遵守、不良現象、機械現象、逆流、破損、大規模破損、破裂、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、2名負傷
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1989)、p.136-137
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.57-59
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負傷者数 |
2 |
物的被害 |
原料油受槽 |
備考 |
整備不良,判断ミス |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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