事例名称 |
界面活性剤製造装置において勝手に投入位置を変えたことによる過酸化水素の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月26日 |
事例発生地 |
千葉県 袖ケ浦町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
界面活性剤製造工場で原料のドデシルベンゼンスルホン酸をポンプで仕込み、同一のポンプで連続して漂白剤の60%過酸化水素水を仕込んだところ、ポンプ付近で爆発が起こった。ポンプの鉄さびなどにより過酸化水素水が分解爆発した。過酸化水素水は直接反応槽に仕込む手順になっていた。 |
事象 |
界面活性剤製造装置で、反応槽にドデシルベンゼンスルホン酸をポンプから仕込み,アルキルアミンを漂白剤として仕込んだ。さらにドデシルベンゼンスルホン酸を仕込み,連続的に漂白剤として過酸化水素水(60%)を同じポンプにより仕込んだ直後,爆発が起こった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.概要図
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反応 |
酸化(漂白) |
物質 |
ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecylbenzenesulfonic acid)、図3 |
過酸化水素(hydrogen peroxide)、図4 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. ドデシルベンゼンスルホン酸をポンプより仕込んだ。 2. アルキルアミンを仕込んだ。 3. pHを確認したところ8.8であったため、酸性のドデシルベンゼンスルホン酸を追加で仕込んだ。 4. 同じポンプから60%過酸化水素水を仕込んだ。 5. ポンプ付近で爆発が起こった。火災にはならなかった。 |
原因 |
過酸化水素の分解爆発である。。過酸化水素水は反応槽上部より直接仕込むこととされていたが、ドデシルベンゼンスルホン酸と同じポンプから仕込まれた。ポンプの鉄さびなどと反応して過酸化水素が急激に分解反応したとされた。 |
対処 |
消火活動と化学消防車待機 |
対策 |
保安教育の改善、安全管理体制の検討、強化。過酸化水素水のポンプへの接続を切断。 |
知識化 |
過酸化水素の鉄さびによる分解事故例はほかにもある。過酸化水素のように一般的な物質で簡単に分解爆発する物質は多くはない。このような物質の取り扱い基準を確立する必要がある。 |
背景 |
1.定められた作業手順に従わなかったことが原因である。ヒューマンエラーそのものの事故に思えるが、なぜそのような手順になっているか,過酸化水素水の分解爆発の危険性についての教育不足と、それに基づく作業手順不履行が要因であろう。 2.設備面では、ヒューマンエラーがあっても、決められた手順どおり以外には作業を進められないようにすることが望ましい。高濃度の過酸化水素水を鉄さびの存在が考えられる場所には接続させない必要があった。 |
よもやま話 |
☆ 高濃度の過酸化水素水は簡単に分解する。分解してして発生期の酸素を放出する強力な酸化剤であることを、教育していたのであろうか。 |
データベース登録の 動機 |
勝手な判断による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、誤判断、誤認知、思い違い、中和反応、計画・設計、計画不良、設計不良、定常操作、手順不遵守、手順を無視、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額4800万円
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情報源 |
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.59-60
消防庁、危険物に係る事故事例-平成2年-(1991)、p.33、52-53
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
飛散物が半径25mの範囲に飛散.ポンプ1台破損,配管と建物が一部破損.半製品3t被害. |
被害金額 |
4800万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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備考 |
作業手順不履行、教育不足、フェールセーフ |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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