事例名称 |
溶解炉操業中の溶鉄の流出による水蒸気爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月31日 |
事例発生地 |
千葉県 船橋市 |
事例発生場所 |
製鋼工場 |
事例概要 |
製鋼工場の溶解炉の作業中、溶銑の液面が耐火レンガのライニングより上まであがった。溶銑が鉄皮を溶かして炉外に流出し、冷却水と接触し水蒸気爆発を起こした。溶解炉の温度管理が不十分で、炉内が冷え、溶銑が固化して容量が減少していたことが原因とされた。 |
事象 |
くず鉄などの溶解炉で出銑の準備作業中に水蒸気爆発が起こった。熔鉄のレベルが溶解炉にライニングした耐火煉瓦部より上がった。その高温により鉄皮を溶かして炉外に流出した。溶解炉外側下部にある冷却用の水受部に入って水蒸気爆発を起こした。炉の近くで作業していた1名が重傷を負った。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
その他 |
物質 |
鉄(iron)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1989年7月31日20:10 炉内に原料の投入を開始した。 21:15 原料の投入を完了した。 21:39 溶解炉に送風を開始した。 22:20 溶解炉からの出銑の準備ができた。 22:25 送風量を低減させて,出銑口の開口作業を開始した。 22:39 出銑口が開きにくいので送風を停止した。 22:45 溶解炉上部の鉄皮から熔鉄が流出し,溶解炉冷却用の水受け部に入り,水蒸気爆発が起こった。水受けカバーの一部が破損した。 |
原因 |
操業開始時に溶解炉下部で溶鉄が凝固して、炉内容量が減少したことが発端とされた。炉内容量の減少原因は次のいずれかと推測された。 1.溶銑が溜まる部分の温度が低くかった。 2.滴下する溶銑の温度が低く,溶銑が滴下途中で凝固した。 炉内の容量減少により,出銑前に耐火レンガをライニングしていない鉄皮部まで溶銑が溜まったことが原因とされた。 |
対処 |
炉内に水を投入 |
対策 |
1.出銑のタイミングを明確にするため総送風管理を基準化した。 2.溶銑のレベル管理のための温度記録計を設置した。 3.炉体の形状を変更しライニングを羽口上まで上げた。 なお、報告によると安全弁の設置とあるが、どこにどのような安全弁を設置したか不明である。 |
知識化 |
本質的に安全維持ができる運転手順を定め、それを守らせる管理が重要である。ここでは、操業開始時の炉内温度維持が重要だった。 |
背景 |
温度管理が不十分であり,炉内の容量の減少について予見していたかどうかが問題であろう。設計面を考えれば、運転開始時に溶鉄の温度を下がらせない工夫が不十分だったのではないだろうか。 |
データベース登録の 動機 |
設計ミスと作業管理ミスの重なった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、不注意、注意・用心不足、マンネリ、計画・設計、計画不良、設計不良、破損、大規模破損、溶解・漏洩、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、1名重傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額1100万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.33、230-231
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
飛散物(溶銑,スラグ)が4平方mの範囲に飛散.水受カバー破損,溶解炉使用不能.溶銑等18.67t被害. |
被害金額 |
1400万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.概要図
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図3.化学式
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備考 |
設計ミス,作業管理不十分 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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