事例名称 |
アルミニウム箔圧延中における圧延機での静電気帯電による噴霧クーラント油の着火、火災 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1989年08月15日 |
事例発生地 |
滋賀県 草津市 |
事例発生場所 |
非鉄金属工場 |
事例概要 |
アルミニウム箔圧延工場で圧延中、圧延機クーラント油が突然出火し火災になった。噴霧されているクーラント油を受けているオイルパンの帯電による静電気火花が原因とされた。 |
事象 |
アルミニウム箔圧延機の運転中に火災が起こった。クーラント油を受けているオイルパンが帯電し,静電気火花によって噴射されているクーラント油が着火し,火災が起こった。作業者が消火装置を起動したが消火効果がなく,火災が拡大した。クーラント油は温度38-40℃、600-800L/分で噴霧されていた。 |
プロセス |
使用 |
単位工程フロー |
図2.概要図
|
物質 |
クーラント油(coolant oil) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1. アルミニウム箔圧延機で1工程(厚さ300→210μm)を終了し、2工程(厚さ210→130μm)の作業中であった。 2. 圧延機巻き戻し側下部のクーラント油受け部より出火した。 3. 圧延機に噴霧しているクーラント油に着火した。 4. 火災を確認した作業者がハロン1301消火装置を起動した。 5. 圧延機が非常停止し,圧延機内にハロン1301が放出した。 6. 消火効果なく燃焼拡大し、圧延機の可燃部分を燃焼した。 |
原因 |
噴霧されているクーラント油が静電気帯電し、オイルパンで静電気が蓄積して、火花放電をしたことで着火した。消火装置が作動したにも係わらず消火効果がなく被害が拡大した。 |
対処 |
消火装置の作動(効果なし) |
対策 |
1.クーラント油に静電気除去剤を添加。 2.定期的な帯電測定の実施。 3.消火設備の強化。 4.従業員の防火教育。 |
知識化 |
油を噴霧すると静電気が発生し、オイルパンが絶縁されていれば帯電する。これらを十分に考慮した設備が必要である。 |
背景 |
静電気対策の不足、消火設備能力の不足、定期点検を実施していないこと等から、事業所の安全意識が不足していた可能性がある。クーラント油に対する知識が欠けていたと思われる。 |
データベース登録の 動機 |
事故発生に気付いた作業員が消火操作を行ったにも関わらず,消火効果が見られなかった例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、物質の特性、無知、知識不足、勉学不足、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、運転・使用、機器・物質の使用、不良現象、電気故障、帯電、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額7.3億円
|
|
情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.34、302-303
|
物的被害 |
延床面積7788平方mの圧延工場の内1451平方m焼損.火熱が天井をおおったため照明装置と天井部分焼損.圧延機,巻替機,重合機,クレーン被害.クーラント油,ギャー油,ミスト油,モーゴイル油及びアルミニウム状の製品・原材料焼失. |
被害金額 |
7億3000万円(危険物に係る事故事例) |
備考 |
静電気着火,設備検討不足 |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|