事例名称 |
廃液の中和処理装置の能力以上の供給による発生水素の爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年09月12日 |
事例発生地 |
東京都 墨田区 |
事例発生場所 |
金属製品工場 |
事例概要 |
アルミニウム容器製造装置の廃液処理設備で爆発火災が起こった。プロセス廃液である強酸性のアルミニウム廃液をpH調整槽で処理し、廃液槽に送る。pH調整槽の処理能力を超えて処理した。そのため水素が大量に発生し、爆発火災となった。 |
事象 |
アルミニウム製化粧品容器の製造装置の廃液処理設備で爆発が起こった。酸化アルミニウム(Al2O3)処理設備で発生した硫酸とアルミニウム粉を含有する強酸性のアルミニウム廃液はpH調整槽を経由し、廃液槽に流入する。その廃液槽で爆発が起こった。中和の反応式を図3で示した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
廃水・廃油処理 |
単位工程フロー |
図2.概要図
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化学反応式 |
図3.化学反応式
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物質 |
硫酸(sulfuric acid)、図4 |
アルミニウム(aluminium)、図5 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
pH調整槽に硫酸とアルミニウム粉を含有する強酸性のアルミニウム廃液を供給し中和処理をしていたところ、突然廃液槽で爆発が起こった。 |
原因 |
廃液の流入量が過大でpH調整槽の処理能力を超えた。そのため中和が不完全なまま次の廃液槽に流入し、アルミニウムと硫酸の反応から大量の水素が発生した。廃液槽の穴から漏洩しタイムレコーダーのスパークにより着火し、爆発・火災に至った。 |
対処 |
消火活動。 |
対策 |
1.酸化アルミニウム処理量の制限 2.可燃性ガスの換気設備の設置 |
知識化 |
装置能力以上の運転は危険であるとの認識を持って、過大流量を流さない工夫や、可燃性ガスの換気を考える必要がある。 |
背景 |
関係者がpH調整槽の基本的な項目を理解していなかったと思われることが最大の要因と推測される。無理解であったと思われる項目は以下のとおりである。 1.PH調整槽の処理能力の限界 2.可燃性ガスの換気装置の設置 |
よもやま話 |
☆ 一見化学とは関係ないと思われる工場でも、化学反応に伴う危険があることが多い。どうやって、危険性を認識させるかが、課題である。生産増を図るときに生産設備については慎重に検討するが、廃水処理などは注目されずに見過ごされることがある。この様な付帯設備にまで目を配るのが管理職の一つの仕事である。 |
データベース登録の 動機 |
装置の能力をしっかり把握しないで生産計画をたて事故につながった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、計画・設計、計画不良、生産計画不良、定常操作、誤操作、供給量過大、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額1000万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.34、366-367
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物的被害 |
作業場ぼや,10平方m焼損.シャッター,窓ガラス被害. |
被害金額 |
1000万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図4.化学式
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図5.化学式
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備考 |
可燃性混合気形成 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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