事例名称 |
詰まり点検で開放中のアクリルアミド精製塔における残圧による洗浄液の噴出 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1992年10月09日 |
事例発生地 |
大阪府 高石市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
アクリルアミド精製塔の臨時開放作業で熱湯の噴出があった。塔の下部マンホールを開けるためボルトを全数外したところで、塔内から熱湯が噴出し、作業員が火傷をおった。開放のためスチーミングをしたが、運転中に重合でできたと思われる固体が、塔下部のマンホール付近を塞いでいた。作業指示の誤りが大きな原因である。 |
事象 |
アクリルアミド精製塔の臨時開放点検時に、熱湯が噴出す事故があった。精製塔下段マンホールの開放作業中に、塔内に残存していたアクリルアミド重合物および洗浄水(熱湯)が残圧により噴出し,作業中の協力会社員が熱湯を浴び,1名が死亡,1名が軽傷を負った。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
アクリルアミド重合物(polyacrylamide) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1. 発災前日の1992年10月8日にアクリルアミド精製塔への供給量が低下したので、翌9日に開放することにした。 2. 開放点検の前準備として塔内製品の抜液,水洗を開始し,9日朝に完了した。 3. 塔下段マンホールの開放のため全ボルトを緩め少開し,内容物が出てこないことを確認した。 4. 最後のボルトを外した時に残圧によって洗浄水(熱湯)が噴出した。 |
原因 |
1.マンホール解放時に塔内に圧力が残っていた。 2.抜液,水洗が不十分であった。塔最下部の配管あるいはドレン弁から液抜きをするが、詰まりやすい系なので、残っていた可能性はある。 その結果、運転中にできたと思われる重合物がマンホール付近を塞ぎ,少開では内容物が出てこなかったが,最後のボルトを外したとき,残圧によって内容物が噴出した。 |
対策 |
1.作業分担規程の見直し,作業指示内容の相違が発生しないようにする。作業指示内容が異なる場合は作業許可を与えず,作業を実施しない。 2.重合反応を検知するために塔下部に温度計を設置。脱圧装置の設置。 |
知識化 |
1.危険な作業が予測されるときは工事担当者だけでなく、事情を良く知る製造担当者の立会いを求めるなど、仕掛け、仕組みを考える。 2.詰まりやすい系では1カ所で圧力を測定しても、それが正しい保証はない。2カ所以上で測定すべきだ。 |
背景 |
1.製造課からの指示では危険が多い作業となっていたが,保全課が誤って危険性は標準と指示したため,本来実施すべき着工前工事個別会議,飛散防止対策,保護具の着用がなされなかった。とても初めての作業とは思えないので、運転課の指示がなくとも、保全課自身でも危険性は承知していると推測出来る。 2.翌日開放と決める製造課が、危険工事と認定したことなどから、重合物による閉塞が多い蒸留塔と考えられる。にもかかわらず脱圧の徹底をしていない。また、詰まりが多いところでは1カ所で圧力を測っても不十分で、2カ所以上で圧力測定をして残圧がないことを確認すべきだった。 |
よもやま話 |
☆ 報告書にも詳細がなく分からないが、何故塔内に圧が残っていたか。マンホールの開放前に圧力の測定は大前提で、圧力が大気圧と等しいか、あるいは何処か1ヶ所のバルブは大気開放してあったであろう。重合物のため、塔下部のマンホールにだけ残圧があったのだろうか。 |
データベース登録の 動機 |
塔の開放で残圧により熱湯が噴出した事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不備、誤判断、誤った理解、詳細計画ミス、使用、保守・修理、開放工事、不良現象、化学現象、閉塞、二次災害、損壊、噴出、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1993)、p.268-269、277
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.208-209
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
1 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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