失敗事例

事例名称 発電所のボイラー点火用軽油の3/8インチY型ストレーナーのドレンプラグから火災
代表図
事例発生日付 1995年07月06日
事例発生地 神奈川県 川崎市
事例発生場所 火力発電所
事例概要 1995年7月6日、発電所のボイラーのスタート時に点火用軽油ストレーナーのドレンプラグから軽油が漏れ、高温のボイラー壁体にかかり発火した。締付け力不足により片当りのしているガスケットが、締付け力が最も弱い部分で内圧により破断した。この部分から軽油が噴出し、軽油の発火点を越えた温度のボイラー壁体にかかり、発火した。
締め付け管理不足が原因と考えられる。また、消防への通報が発災から3時間近く経過したことは問題であろう。
事象 4号ボイラー点火用軽油配管(3/8B)のストレーナーのドレンプラグのシートガスケットの亀裂箇所から軽油が噴出し、1.5m離れたボイラーの壁体にかかり火災となった。図2参照
プロセス 使用
単位工程フロー 図3.単位工程フロー
物質 軽油(gas oil)
事故の種類 漏洩、火災
経過 1995年7月6日06:00 4号ボイラーの起動を開始した。
11:12 作業員が2階において上から垂れてくる油を発見した。
11:13 3階ボイラー壁体からの火炎を確認した。
11:15 消火器3本により初期消火後、緊急停止装置により4号ボイラーを非常停止した。
11:32 中4階イグナイター-コントロールボックス軽油入口配管のY型ストレーナー部から軽油が漏洩しているのを確認した。
11:40 ガスケットの破断を確認し、応急的に銅製ガスケットに交換した。
14:00 臨港消防署へ通報した。
原因 ねじ込み部の当たり面のシートパッキンが破断していた。締付け力不足により片当りのしているガスケットが、締付け力が最も弱い部分で内圧により破断した。この部分から軽油が噴出し、軽油の発火点を越えた温度のボイラー壁体にかかり、発火した。
1.軽油配管の内圧は最大1.4MPaGで、その時、ガスケットの円周方向にかかるせん断応力は正常時0.42kg/mm2になる。また、破断時の状況での応力は、片当たり部の範囲その他をある条件に設定すると3.9kg/mm2と計算でき、ガスケットの引っ張り強度3.2kg/mm2を越えることから、これが破断の原因とした。
2.ボイラー炉壁温度は最高温度320℃とされ、これが軽油の発火点(約240℃)を越えていたため、発火したものと推定した。
対処 1.消火器により初期消火
2.ガスケットを応急的に銅製ガスケットに交換、類似箇所を点検
対策 1.ドレンプラグの締付けに際し、トルクレンチを使用し、必要締付け力を確保し、ガスケットの締付け力の不足による片締めを解消する。
2.緊急時の通報体制を見直すとともに全従業員に対し教育訓練を実施し徹底をはかる。
知識化 高温壁面(ボイラー炉壁)近傍での発火しやすい物質(軽油)を取り扱う設備は厳重な管理(漏洩等防止)が必要である。
背景 締め付け力管理の不適正
よもやま話 ☆ 3/8インチY型ストレーナーのドレンプラグはねじ込みで、通常はネジが締め初めにあたりが取れキチンと入りさえすれば、洩れるようなものではない。不思議な事故である。
データベース登録の
動機
締め付け不良による噴出火災事故例
シナリオ
主シナリオ 不注意、注意・用心不足、作業者不注意、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、使用、保守・修理、修復、機能不全、諸元未達、性能未達、二次災害、損壊、火災
情報源 川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1995)
物的被害 4号ボイラーの壁体若干焼損、軽油約2リットル焼失
マルチメディアファイル 図2.パッキン状況図
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)