事例名称 |
装置の緊急停止に伴い変更した留出配管からの分解ナフサの漏洩による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1999年05月31日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1999年5月31日に起こった製油所のガス化脱硫装置の分解ナフサ留出線を切り替えた時の事故である。停電による緊急停止のため、通常使用しない配管に分解ナフサが送液された。この配管内では、局部腐食が進行し開孔していたため、送液後漏洩した。漏洩ナフサは、高温配管に接触し発火した。 |
事象 |
川崎区水江町地域一帯が停電となり、東京電力からの買電が停止した。この影響により製油所の電力選択遮断システムが作動するとともに、緊急停止システムが作動した。緊急停止のプログラムにより、ガス化脱硫装置の分解ナフサの留出先は、分解ナフサ分溜洗浄装置から半製品タンクに自動的に切り替わった。その後、パトロール員が当該装置を点検中に、地上約7メートルの高さに位置する配管ラック上のナフサ配管から分解ナフサが噴出しているのを発見し、携帯無線機で応援を呼んでいた。その時、漏洩箇所から約3メートル離れた他配管付近から炎が上がった。 図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溜出・取出し |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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図4.単位工程フロー
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物質 |
ナフサ(naphtha) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1999年5月31日11:25頃 水江町地域一帯が停電となり、東京電力からの買電が停止した。 11:46頃 所内の電力遮断システムおよび緊急停止システムが作動した。 分解ガス回収装置のパトロールを行った。 ナフサ留出配管からの分解ナフサ漏洩により火災が発生した。 11:47 119番通報 11:51 漏洩箇所のバンド掛けを行う(配管ピンホール部を塞ぐ)。 11:52 鎮火した。 |
原因 |
買電が停止したことから、事業所の電力遮断システムが作動するとともに、緊急停止システムが作動した。その結果、ガス化脱硫装置の分解ナフサの留出先は、分解ナフサ分溜洗浄装置から半製品タンクに自動的に切り替わった。この際、送液する配管の気相部には、すでに錆瘤等が生成しており、局部腐食が進行し開孔していた。そのため分解ナフサが漏洩、直近の高温配管フランジ部に接触し引火、もしくは、配管保温材に浸透し発火点に至り、着火発災したものと推定される。 |
対処 |
漏洩箇所のバンド掛け実施(配管ピンホール部を塞ぐ) |
対策 |
1.2000年度の定期修理工事まで、当該配管の使用を禁止し、2000年には配管の全面更新をする。 2.類似配管の総点検を実施する。 3.配管の保安管理基準を設定する。 4.検査インターバルを明確化する。 5.検査管理の徹底を行う。 |
知識化 |
平常使わない配管は維持管理がおろそかになりやすい。しかし、使う機会がゼロでないならば、平常使用配管と同様の維持管理が必要だ。 |
背景 |
切替えた半製品タンクへの留出配管は、発災に先立つ11年前に他装置の留出線と共用に改造した。その後他装置からの留出量が少なく、配管内は気液の2相分離や腐食媒体の存在で腐食されやすい状態になっていた。1992年の全面更新、1998年部分更新をし、発災年も事故に先立ち”滲み”が発見されていたので、翌年更新の予定だった。その配管内で局部腐食が進行し、開孔していたところに、停電のため分解ナフサが送液され、漏洩した。漏洩ナフサは、高温配管に接触し発火した。設備管理の不十分が基本要因であろう。 |
よもやま話 |
☆ 更新工事が決定していた配管を、思いがけなく早く使用する羽目になった事故である。油断大敵のご不幸な事故とも言えるが!? |
データベース登録の 動機 |
緊急用配管保全不良による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、誤判断、状況に対する誤判断、緊急時使用配管、使用、保守・修理、点検不良、破損、減肉、腐食、破損、破壊・損傷、開孔、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1999)
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物的被害 |
配管保温材若干焼損.分解ナフサ(UCN)約10リットル焼失 |
被害金額 |
約10万円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.状況図
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プロセスの安全/製造時での事故と安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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