事例名称 |
重油水素化脱硫装置で計器用取り出し配管の元バルブ本体溶接線の破断による漏洩 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1984年05月17日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1984年5月17日 製油所の重油水素化脱硫装置の定期修理後のスタートアップ中、高温高圧分離槽入口配管の計器取り出し部のバルブが破損し、油とガスが漏洩した。当該バルブは、溶接後の熱処理が不十分であったため、当該溶接部の硬度が高いことが起因して、環境水素(硫化水素を含む)のもとで割れ、漏洩を起こした。 |
事象 |
製油所の重油水素化脱硫装置で漏洩事故があった。定期修理後のスタートアップ中、同装置の高温高圧分離槽入口配管の計器取り出し部のバルブが破損し、油とガスが漏洩した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
水素(hydrogen)、図4 |
軽油(gas oil) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1984年5月9日 スタートアップ操作を開始した。 5月12日-16日 原料油(軽油)張り込み、昇温、昇圧操作を行った。 5月17日10:30 原料油を軽油から重質軽油に切り替えを開始した。 12:28 差圧指示調節計取り出し配管元バルブ付近より油及びガスが漏洩し、直ちに当該装置の緊急停止操作に入った。 12:30 緊急脱圧操作を開始した。 12:41 系内圧力が2.0MPaGまで低下した。 12:49 系内圧力が1.0MPaGまで低下したので、窒素の導入を開始した。 |
原因 |
1.当該バルブについては、実質的に、溶接後熱処理がされていないと推定された。 2.そのため、溶接後熱処理不十分により、当該溶接部の硬度が高いことが起因して、環境水素(硫化水素を含む)のもとで割れたと推定された。 上記推定の根拠 (1)破断した部位は、バルブボディとシーリングの突き合わせ溶接部のほぼ中央であった。 (2)破断面の内周には、若干溶接開先が残り、溶け込み不足が認められた。 (3)破断した溶接箇所の硬度が高い。これは、上記の2項と相まって、材料が割れを起こしやすい状態にあった。 (4)材質については、母材、溶着金属とも正常で定められた規格どおりであった。 (5)ミクロ組織を見ると、破損部の溶着金属及び溶接熱影響部とも焼入れ時に観察されるような硬化組織であり、溶接後熱処理が十分でなかったと言える。なお、水素による脱炭の徴候は見られなかった。 (6)破断面を走査電子顕微鏡で観察した結果、破断面の内部に水素による遅れ破壊の特徴とされている疑剪開破面が観察され、水素による遅れ破壊の可能性が強いことを示していた。 図2参照 |
対処 |
1.漏洩後、直ちに当該装置を緊急停止。 2.続いて緊急脱圧操作開始し、窒素を装置内に導入した。 |
対策 |
1.事故後の措置 (1)当該バルブメーカーの同種製品が当該装置にないことを確認した。 (2)他バルブメーカーの同種製品について、検査を実施し、安全性を確認した。 2.改善事項 (1)完成部品の受入れ管理を見直した。 (2)現場施行管理の徹底を図った。 |
知識化 |
設備管理は完成部品の品質まで含めたきめ細やかな管理が必要であることを再認識した。 |
背景 |
購入品の受入試験のミス、管理ミスとも言えるが、実際には使用側からすると不可抗力に近い。使用するメーカーを指定し、規格を指定して購入する。メーカーとの信頼関係でなりなっているので、硬度などの受け入れ検査は実際には行われないのが通常であろう。 |
データベース登録の 動機 |
溶接部が水素雰囲気で破断した事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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企画不良、戦略・企画不良、発注者見極め不良、組織運営不良、管理不良、納入品受入管理不良、非定常行為、無為、任せきり、破損、破壊・損傷、亀裂・割れ、二次災害、損壊、漏洩
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情報源 |
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.38-44
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マルチメディアファイル |
図2.状況図
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図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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