事例名称 |
高圧法ポリエチレン装置においてラプチャーディスク取付部からの漏洩による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年11月26日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1991年11月26日 低密度高圧法のポリエチレン製造装置で、重合系の停止のため脱圧作業を行った。重合器圧力が245MPaGから65MPaGに下がったところで、ラプチャーディスク取付け部より、エチレンガスが漏洩、火災になった。ラプチャーディスクの取り付けのコーンリングが正しく装着されてなく、エチレンガスが漏洩し、静電気(推定)により着火、火災となった。 |
事象 |
ポリエチレン製造装置の重合系の停止操作中、安全装置(ラプチャーデスク)取付部よりエチレンガスが漏洩し、着火し火災となった。図2参照 ラプチャーディスク(RD): 破裂板とも言う。圧力上昇時の安全設備の一つである。平板の一部に弱い部分を作り、圧力の異常上昇時にその部分を破裂させて圧力の放散させる。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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物質 |
エチレン(ethylene)、図4 |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1991年11月26日08:37 製品グレード切替えに伴って、押出機のスクリーンパック交換のため、重合系の停止操作に入った。 通常の運転圧力245MPaGから圧力223MPaGまで降下させ、触媒の供給を停止し、さらに、圧力を65MPaG位に降下する操作を行っていた。 08:50頃 RD取付部よりエチレンガスが漏洩し、ガス探知器が作動した。 この時、漏洩ガスが着火したと思われ、直下の温度計が火災にあおられ、温度計の指示が上昇し、300℃で、安全弁のシーケンスが作動した。直ちに、ガス遮断等の消火活動を行った。 09:05 鎮火・処理を完了した。 スクリーンパック: 押出機の最終段でペレットにするカッターがあるが、その上流に設置してある特殊な網をいう。高圧法ポリエチレン装置では重合部と最初の押出機が直結しているので、スクリーンパック交換をするためには反応を停止することが必要になる。グレードにより要求メッシュ数が異なることがある。 |
原因 |
1.漏洩火災を起こしたと思われるRDを主体とする解体点検を行った結果、RD西側フランジ部より漏洩したものと思われる。その理由としては、 (a)RD西側コーン・リング当り面(直管側)にガス漏洩によると思われる樹脂の付着がある。 (b)また、その反対当り面(ブロック側)には、燃焼によると思われる痕跡がある。 (c)コーン・リング外周面に燃焼生成物(媒)がみられる。 (d)RDの東側および予備RDの東西の計3ヶ所のコーン・リングには、上記の現象が見られない。 2.漏洩原因の推定 RDの西側コーン・リング当り面(直管側)が、約2mmしかなかったのは、コーン・リング交換時の初期セッティングが不良であったためと思われる。なお正常な場合の当り面幅は4~6mmである。同コーン・リングの反対側(ブロック側)当り面幅が、2重(2度当り)となって、約5.8mmあるのは、漏洩初期に直管側から微小漏れによってコーン・リング全周面に圧力がかかったためと推定される。 3.着火原因 付近に直接の着火源がないため、静電気により着火したと推定される。 |
対処 |
ガス遮断、消火活動実施 |
対策 |
1.フランジ締付時、直管の初期セッティングを確実にする。そのために具体的なチェックリストを見直し修正する。 2.今回の定期修理工事で、コーン・リングを更新した個所(11ヶ所)については、全数開放点検し、コーン・リングを取替える。 |
知識化 |
配管接続部などは少々の不具合があってもすぐに不都合が生じるとは限らない。気密テストなどは、正しい手続きのうえに正しく組み立てられていることが前提となっている。この事例のRD取り付け不良でも、取り付け直後には不具合が発生しないで、圧力低下時に発生している。 |
背景 |
配管工事作業員の技量不足か、見落とした技術員の力量不足かと思われる。コーンリングによる接続は特殊な技量が要る作業で、ある程度は不可抗力かもしれない。 |
データベース登録の 動機 |
ラプチャーディスク取り付け不良による漏洩火災事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、作業者不注意、使用、保守・修理、修復、機能不全、ハード不良、洩れ、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接被害額300万円
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1992)、p.186-187
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.131-135
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物的被害 |
断熱材25平方m.温度計,ガスケット,照明器具,ケーブル.エチレン700kg. |
被害金額 |
約300万円(石油精製及び石油化学装置事故事例集) |
マルチメディアファイル |
図2.装置図
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図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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