事例名称 |
ペンキ製造用タンクの洗浄時ブラシでこすっている間の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年01月30日 |
事例発生地 |
大阪府 枚方市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
1995年1月30日 塗料工場でタンクの洗浄中に爆発事故が起こった。塗料工場でタンク内容物を変更するため、前の塗料を抜出し後3日間放置してから、酢酸エチルを入れ、長柄のブラシで清掃中、発生した静電気により爆発、作業員6名が顔面に火傷を負った。通常は抜出し直後に洗浄を行うが、時間を置いたため塗料が固まり、何度もブラシ掛けを行うことになった。可燃性溶剤使用環境で静電気火花が発生したため発災した。この洗浄作業はもともと危険性の高い作業で十分な静電気対策などの管理が必要であった。 |
事象 |
ペンキ製造工場でプレミックスタンクの清掃を行った。タンク内に酢酸エチルを入れて洗浄作業中にタンク内で爆発が発生し、作業員1名が顔面に熱傷を負った。洗浄用ブラシの刷毛に静電気が帯電し火花が発生したために引火したものと推定される。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
酢酸エチル(ethyl acetate)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1995年1月27日 タンクを空にした。そのまま放置した。 30日10:00 タンク洗浄を開始した。内径1,300mmのタンクに酢酸エチル50Lを入れ、ブラッシでこすった。洗浄は終わらなかった。 (時間不明) 再度酢酸エチル50Lをタンクに投入し、3時間放置、湿潤した。 (時間不明) 放置した酢酸エチルを容器に取り、小刷毛で5分間側壁を洗浄したら塗料が取れたので、底面を酢酸エチルごとブラシでこすった。 14:21 底面をこすっていた時、爆発した。 |
原因 |
当該タンクは、事故発生の3日前に塗料を抜き取った後、未洗浄状態で放置した。洗浄当日、タンク底部に塗料が大量に付着、固まっていた。酢酸エチルで同タンクを洗浄作業しようと、底部に固まった塗料を強く繰り返し擦ったことにより、刷毛先端部に帯電し火花が発生、溶液の蒸気に引火したものと推定される。通常はタンクを空にしたら、直ぐ酢酸エチルの注入、ブラシによる洗浄を行い、きれいにする。ほぼ3日間を放置したため、塗料の溶剤分が飛んだなどの理由で、塗料中の顔料、樹脂などが溶けにくくなっていたものと思われる。 |
対処 |
消火器2本にて消火 |
対策 |
1.静電気対策においては、色々な対策を講じているが、これらの対策が有効に機能しているか定期的に点検を行い、静電気対策を徹底するとともに、従業員に対し静電気に関する知識の向上をより一層高めるよう教育を行う。 2.タンクに残存している危険物をそのまま放置していたため、通常の洗浄では取りきれなくなり、今回の事故が発生したものと思われる。したがって、予防規程等に不要になった危険物を速やかに洗浄し、また、廃棄する旨を明確に規程するなど、不必要な危険物の処理についてソフト面での強化が必要と思われる。 |
知識化 |
可燃性溶剤を用いておこなう洗浄作業は発火の危険をともなうため、静電気対策等十分な安全管理が必要である。 |
背景 |
1.タンクから塗料を抜き出した直後に、何故直後に酢酸エチルを加えて洗浄するのか、管理側も作業者も理由が分からずに3日間放置した。知識の不足が真の要因であろう。もし、溶解しにくくなることを知っていて3日間放置したならば、怠慢であろう。 2.酢酸エチルの火災危険性の把握をまったく考えていないように思える。それ以前は事故が起こらなかったが、引火性溶剤使用環境でブラッシングという静電気を発生する作業を、静電気除去対策の有効性の確認なしに行わせたことなど、明らかに安全確保の基準の逸脱であろう。 |
データベース登録の 動機 |
危険物タンク洗浄中の爆発事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、マンネリ、計画・設計、計画不良、洗浄スケジュール計画不良、定常動作、不注意動作、繰返し摩擦、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、1名火傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成7年(1996)、p.24、72-74
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負傷者数 |
1 |
物的被害 |
屋内タンク類の酢酸エチル焼損.酢酸エチル50リットル被害. |
被害金額 |
約1000万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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