事例名称 |
不要配管を長年放置した後の撤去作業中での腐食部からの原油まじりの水の漏洩 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年10月31日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1990年10月31日、製油所で不要配管を撤去するため滞油を加圧して抜き出そうとしたら、腐食部から油が漏れた。不要配管に水混じりの原油が滞油していたため腐食した。不要配管や休止配管は、配管系を複雑にして誤操作を招くほか、腐食や破損による漏洩の温床となる。 |
事象 |
製油所の不要配管撤去工事で漏洩事故があった。当該配管は原油タンクから精製装置への送油配管であったが、2年半ほど前から休止していた。その不要配管を撤去する際、配管内の滞留油を除去するために窒素で加圧したところ、道路横断のトンネル部で配管の腐食部から原油混じりの水が漏洩した。図2参照 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
原油(crude oil) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1990年10月31日09:30 撤去する配管内の滞留油の除去作業を開始した。 10:25 窒素による加圧を開始した。 10:35 圧力が0.1MPaGになった。昇圧を停止しして点検したが異常はなく、タンクの元バルブを徐々に開いて滞留油の移送を開始した。 10:45 圧力は0.2MPaGに達する。異常なし。 10:50 巡回点検中に原油混じりの水の漏洩を発見した。圧力は0.26MPaGだった。 10:55 窒素加圧を直ちに停止し、タンクの元バルブを閉止した。関係部署に連絡を行った。 11:00 119番通報を行った。 11:05 配管内の圧抜きとタンクヤード内の原油抜き取り作業を開始した。 11:50 バンドを巻いたが漏れは止まらなかった。漏油の回収を実施した。 12:43 金属セメントを塗布し再度バンドを巻いたところ、漏れが止まった。 |
原因 |
1.配管内に水混じり原油を滞留させたまま休止していたため、スラッジなどが配管内面の下部に沈殿し、内面腐食が進行していた。 2.腐食部分に堆積していたスケールが移送により除かれ、開孔した。 |
対処 |
1.バルブを閉止し、管内圧を下げ、金属セメントとバンドを使用して漏れを止めた。 2.消防に連絡した。 |
対策 |
1.不要配管は撤去する。 2.休止配管は内容物を除去して仕切り板により使用部と縁切りし、窒素ガスシールをする。 3.内容物を除去できない休止配管の場合は、2年に1度、配管の厚さを測定する。 |
知識化 |
1.不要配管は撤去する。 2.休止配管は使用部と縁切りし窒素ガスシールを行う。できない場合は、日常点検を怠らない。 |
背景 |
1.配管撤去にもコストがかかるし、将来使えるかも知れないとして、不要配管でも撤去しないことは多い。その場合、コストをかけないため、パージが不十分だったり、維持管理を怠ることがしばしばある。これもその例であろう。 2.何時か腐食するとの意識が少ない。 |
データベース登録の 動機 |
不要配管を放置して腐食した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、使用、保守・修理、点検なし、破損、減肉、腐食、二次災害、損壊、漏洩
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情報源 |
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.122-124
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1990)
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物的被害 |
原油約800L |
マルチメディアファイル |
図2.漏油箇所図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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