事例名称 |
熱処理工場のガス雰囲気炉において混入した水の突沸による焼入油の流出 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年04月13日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
機械工場 |
事例概要 |
1996年4月13日、機械の熱処理工場においてガス雰囲気炉の運転を開始したら、焼入油が排気筒先端から出た。焼入油槽のクーラーが長期使用のためわずかに水が漏れ、焼入油中に入り、部品の高熱により水が一気に蒸発したものと考えられる。クーラーの点検が13年なされず、焼入油の水分分析も年1回であった。事故の2日前に前兆現象らしいものがあった。 |
事象 |
機械の熱処理工場において、ガス雰囲気炉で焼入油の噴出事故があった。浸炭焼き入れ作業中、浸炭用の未燃ガスや焼き入れ油のミストなどを未燃ガス燃焼装置へ送り出す排気筒の先端の装置から、焼入油が噴出した。 |
プロセス |
使用 |
単位工程フロー |
図3.単位工程フロー
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物質 |
焼入れ油 |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1996年4月11日、ガス雰囲気炉を自動運転したところ、少量の白煙を確認した。製品に塗布してあった浸炭防止剤に変色と剥離があった。 4月13日08:00 ガス雰囲気炉を点検後に運転開始した。 15:00 焼入油槽内の撹拌機を手動で作動させた際にパチパチという音を聞いた。 17:00 焼入油槽に部品を投入した。 17:05 排気筒の先端から焼入油が噴出し警報が作動した。手動に切り替え自動搬送機をインターロックし、続いて、噴出した油の回収を開始した。 17:13 消防署に加入電話で通報した。 17:47 油の回収と浸炭ガス(メタノールとLNGの混合ガス)の窒素置換を完了した。ヒーター電源を遮断し、作業を終了した。 流出量は約10Lであった。 4月15日 メーカーが水漏れを確認した。 |
原因 |
1.焼入油槽に基準値の10倍以上の水分(0.1%以上)が混入していた。これが撹拌されて全体に分散している状態で部品を投入したため、槽内の水が急激に沸騰し、水蒸気とともに焼入油が噴出したとみられる。 2.オイルクーラーに定期点検項目がなく、約13年間点検と清掃を行わなかった。水道水側の内面に応力腐食割れが進行していた。事故2日前に貫通割れとなり冷却水が焼入油に混入したとみられる。 3.焼入油への水の混入は油メーカーが年1回点検するのみで、始業点検などはなかった。 4.冷却管の材質や組織には異常はなかった。 |
対処 |
自動搬送機を停止。油回収。浸炭ガスを窒素置換。ヒーター断。消防署へ通報。 |
対策 |
1.始業前に焼入油槽内の含水量を検知用薬品で点検する。 2.全従業員に対しミーティングを週1回実施し、教育の徹底・強化をはかる。 |
知識化 |
スタート以来事故がなかったといって、本来行うべき日常点検や装置の点検を行わなければどこかでその報いがくる可能性がある。 |
背景 |
1.上水も腐食媒体であり、さらに水温の変化、水質の変化、焼入油の温度変化などに思い至らずに、13年間放置して応力腐食割れを起こしている。さらに焼入油管理の要点の一つである水分量の測定も年1度、焼入油製造業者に任せたままである。これは運転管理と設備管理が事故がなかったのを幸いにして、緊張感がなくなっていたことを示していると思われる。 2.焼入油も可燃物であり、劣化することもあるのを忘れていた。 メンテナンスの不備といってよいであろう。 |
よもやま話 |
☆ 焼入油の事故は意外に多い。危険物に指定されていないため、安心するからだろうか? |
データベース登録の 動機 |
焼入油中に水が混入 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、誤判断、狭い視野、水の影響は想定外(想像力不足)、使用、保守・修理、13年間点検せず、破損、減肉、腐食、二次災害、損壊、漏洩
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情報源 |
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1997)
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物的被害 |
焼入油約10L |
被害金額 |
2000円(川崎市コンビナート安全対策委員会資料) |
マルチメディアファイル |
図2.冷却水管の破損状況
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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