事例名称 |
新設の原油浮屋根タンクの水張り試験中に底が抜け破壊 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1968年07月08日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1968年7月8日、新設の65000klタンクの水張り試験中に不等沈下を起こした。満水の状態で、基礎の高所を削る作業中底板が破壊され、大量の水が流出した。底板を支える地盤の一部が離れ応力集中を起こし、亀裂し、そこからの水が土砂を流し、底板の亀裂を大きくした。 |
事象 |
新設した65000kL原油タンクの水張り試験中、タンク基礎に250mmの不等沈下を生じた。満水のまま基礎の調整作業を始めたところ、4日目に底板が9つに分かれて破壊し、タンク直下の土砂が多量に流出した。 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
水(water) |
事故の種類 |
漏洩 |
経過 |
1968年7月5日 新設タンクの水張り試験で不等沈下が生じたので、基礎の高い部分の砂を抜き取る作業を実施した。 7月6日 作業は休みであった。 7月7日 砂の抜き取り作業を再度実施。 7月8日3:00頃 タンクの底板が破壊した。 タンク下の穴は深さ約5m、流出土砂は3000~4000立方m、仮設小屋や建設機材が流出した。 |
原因 |
1.満水状態で側板の下部を掘ったため、アニュラ板に高い応力が発生して割れた。割れの部分からの漏水により基礎が軟化して支持力が低下した結果、底板が局所的に沈下して膜応力が許容値を超え急激な破断に至ったとみられる。 2.自重を利用して基礎の均一化を図ったが方法として不適切であった。図2参照 |
対策 |
1.工事計画の立案体制の見直しが必要であろう。 2.構造に過大荷重を誘発する状態を作らない。 3.基本的にはタンク完成、水張り試験での不等沈下とは信じられない。補修工事の前に建設計画、建設工事の能力を上げることが最重要であろう。 |
知識化 |
困難な作業は作業の省略や単純化がなされやすい。 |
背景 |
工事計画立案ミスであろう。作業を急いだためか検討を十分に行っていないと考えられる。底板強度は下が支えられることが前提になっている。支えがなくなれば応力が集中するのは当然である。 |
よもやま話 |
☆ タンク完成検査時に不等沈下とは何だろうか。 ☆ ガスや液体でもない土壌に対して、巾100mm深さ50mmの溝を掘って、上から荷重を掛ければ、全体の高さが均一になるという発想は、どうしたら出るのだろうか。 |
データベース登録の 動機 |
無理な工事計画でタンク破損を起こした例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、工期短縮最優先、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、工法計画不良、使用、保守・修理、間違った修復方法、破損、大規模破損、タンク破壊、組織の損失、経済的損失、65000kl浮屋根タンク全壊
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情報源 |
亀井浅道(安全工学協会編)、火災爆発事故事例集、コロナ社(2002)、p.172-179
高圧ガス保安協会、千葉コンビナート保安調査報告書(1978)、p.48-49
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マルチメディアファイル |
図2.不等沈下の修正法図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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