事例名称 |
タンク底部の亀裂による43000klの重油の瀬戸内海への流出 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1974年12月18日 |
事例発生地 |
岡山県倉敷市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
1974年12月18日 使用中の重油タンクの底板が破れ、43,000klの重油が漏れ、防油提を超えて流れ出した。半年以上前の3月の完成時の水張り検査時に水張り状態のまま、タンク下を掘削し、独立階段を設置した工事の影響で底板の破壊に至った。わずか9ヶ月で腐食もしていた。 |
事象 |
新設のタンクを使用開始して約9ヵ月後に破壊した。タンク底部に生じた亀裂により大量の油が急激に流出した。防油堤の一部を破損し、堤外へ重油約43000kLが流出した。重油タンク周辺には防油堤が設置されていたが、吹き飛ばされて倒壊した点検用鉄製階段によって破壊されたため用をなさず、C重油は排水溝等を経て、瀬戸内海へ流出した。図2参照 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩、環境汚染 |
経過 |
1974年3月、事故が起こった重油タンクを使用開始した。 12月18日、通常通り使用中、突然タンクが破壊し、重油約43000kLが流出した。 |
原因 |
タンクの本体完成後に独立の直立階段を建設することになった。直立階段基礎を作るため、タンク外周に沿って約5m、側板から中心方向に約0.4m掘削した。基礎の打設は水張り水位医12mの時に行われた。工事終了後に埋め戻されたが、作業の困難さがあり十分には締め固められなかったと推定される。このため、タンクの荷重により基礎地盤の局所的な沈下が進行し、タンク本体に過大な荷重が作用して、ついには破壊に至ったとみられる。 |
対処 |
深夜にオイルフェンス展張を試みたが、強い風波と大量の流出油のため作業は難航した。 |
対策 |
1.構造的に過大な荷重が発生する状態を作らないよう、各種の設計マニュアル、設計基準、関係法令を遵守する。 2.開放検査時に不等沈下を計測する。 3.この災害は異常な応力集中によるものだが、経年劣化による部材の強度低下を安全な範囲にとどめるとともに必要に応じて適切な補修を行うことも必要である。 |
知識化 |
1.タンクにかかる荷重は、側面下端部近傍に集中している。アニュラ板と底板の接合部が弱点になりやすい。その部分にさらに応力集中を増すのは避けねばならない。 2.困難な作業では、検査・確認もまた困難になるので、極力避けるべきである。 |
背景 |
工事計画のミスと言えるであろう。タンク完成後にタンク底板下の掘削を行うのは論外だが、それ以上にそのようなスケジュールになる様な当初の工事計画に問題がある。発災した工事ではタンク使用開始のスケジュールとコストの問題があったと推定する。 |
後日談 |
法改正で2重防油提導入のきっかけとなった重大事故 |
よもやま話 |
論外な事故である。水張り水位12mで基礎の打設をしたと資料にあるが、掘削も油の入った状態で行われたのだろうか。出来上がったタンク下や周囲を大きく掘削するのは問題である。きちんとした埋め戻しをして、水平のタンク基礎を作るのは非常に難しいと思われる。事故を誘発するだけではないだろうか。タンク本体に後から溶接していたら、もっと問題だろう。 |
データベース登録の 動機 |
無謀な工事から9ヶ月後にタンク底板亀裂から破壊した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、工期・予算最優先、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、機械現象、応力集中、破損、大規模破損、破壊、二次災害、環境破壊、海上汚染重油43000kl、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
亀井浅道(安全工学協会編)、火災爆発事故事例集、コロナ社(2002)、p.172-179
日本火災学会、災害事例 流出油災害 No.3、タンク火災 <基礎知識と防災活動>(1990)、p.43
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物的被害 |
ノリ、ワカメ及びハマチの養殖などに甚大な被害 |
社会への影響 |
瀬戸内海に大量の重油が流出し、環境汚染を引き起こした。 |
マルチメディアファイル |
図2.破壊したアニュラ板図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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