事例名称 |
グラビア印刷機のインクタンク付近での静電気による引火、火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年07月10日 |
事例発生地 |
京都府 船井郡 丹波町 |
事例発生場所 |
印刷工場 |
事例概要 |
1989年7月10日、印刷工場でグラビア印刷機を静電気除去設備が故障のままに運転中、圧ローラーと印刷物の間で静電気放電しインキに引火した。危険物の貯蔵数量も指定値を超えており、消防への通報も遅れた。 |
事象 |
グラビア印刷機を稼働中、静電気除去装置が動作していなかったため静電気火花が生じ、圧ローラー付近のインクに引火、火災となった。図2参照 |
プロセス |
使用 |
物質 |
トルエン(toluene)、図3 |
グラビア印刷インク |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1989年7月10日、5色グラビア印刷機での印刷作業を開始した。 15:15頃 5色目の印刷機のインクタンク付近からの出火を発見した。 消火器及び二酸化炭素消火設備で初期消火を試みたが消火できなかった。 15:21 119番通報をした。 15:40 火災を鎮圧した。 15:53 鎮火を確認した。 従業員3名の負傷は煙による中毒症状であった。 |
原因 |
1.印刷機の静電気除去装置のスイッチが切られ、かつ同装置の配線が断線していたため、圧ローラーと印刷物の間で静電気が発生し、放電した。放電箇所がインクタンクの上部にあったので、インク溶剤のトルエンに引火した。 2.消火設備は任意設置のもので点検整備を業者に一任し、日常点検を実施していなかったため、消火設備を効果的に利用できなかった。 |
対処 |
消火器と二酸化炭素消火設備による初期消火。消防署への通報。 |
対策 |
1.屋内危険物貯蔵施設を新設し、一度に取扱う量を指定数量未満に減らす。 2.防火管理上必要な業務を確実に実施する。 |
知識化 |
危険物を使用する側では、静電気の危険性を十分には理解していないことが多い。使用(消費)も製造も危険物の取扱いには変わりがないので、使用者側に対する啓蒙が重要であろう。 |
背景 |
1.設備と運転管理が不十分である。 2.消防法危険物を指定数量以上に保管したり、通報遅れがあるなどを併せ考えると、安全軽視の企業体質や、知識不足が考えられる。 |
よもやま話 |
☆ 油性インクは通常トルエンに顔料や粘着材が混合されている。取扱いは引火危険性の大きいトルエンと同じであるが、使用者側はもっと簡単に考える傾向があるようだ。 |
データベース登録の 動機 |
設備不備のままで運転し静電気事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、無知、知識不足、不勉強、使用、保守・修理、修復せず、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、電気故障、静電気帯電、二次災害、損壊、火災、身体的被害、発病、3名中毒、組織の損失、経済的損失、直接損害額1300万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.33、376-377
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負傷者数 |
3 |
物的被害 |
5色グラビア印刷機1台,作業場庇など焼損.2色グラビア印刷機の水損及び汚損,2色凸板印刷機の汚損,シリンダ60本の水損.トルエン40L水損.グラビア印刷インク汚損,650L熱損. |
被害金額 |
1300万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.印刷機の構造と出火場所図
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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