失敗事例

事例名称 減圧軽油脱硫装置の配管フランジ部からのガスの漏洩による火災
代表図
事例発生日付 1989年09月27日
事例発生地 大阪府 高石市
事例発生場所 製油所
事例概要 運転中の減圧留出油脱硫装置の新設反応塔出口配管フランジ部から水素や減圧軽油が噴き出し火災になった。3ヶ月前のスタート時のホットボルティングの締付け力管理が不十分で、フランジ部が少し開き漏れた。
事象 製油所の減圧留出油脱硫装置を連続運転中、新設の反応塔で火災が起こった。反応塔の上部配管のフランジから内部のガス(水素、炭化水素、その他)が噴出した。発火して高さ0.5~2mの炎が上がった。3ヶ月前の運転開始時のホットボルティングが不十分だった。図2参照
プロセス 製造
単位工程 反応
反応 水素化脱硫
物質 水素(hydrogen)、図3
減圧軽油(vacuum gas oil)
事故の種類 漏洩、火災
経過 1989年6月 減圧留出油脱硫装置第2反応塔が完成した。運転を開始し、昇温途上の約200℃及び360℃の時点でホットボルティングを行い、連続運転に入った。
9月27日19:55頃 反応塔(高さ13m)の上部配管のフランジから内部の水素を含む減圧留出油が噴出し、発火して、高さ0.5~2mの炎が上がった。
20:00 119番通報をした。非常措置指令を発令して、緊急停止操作を開始し、運転圧力10MPaGより脱圧を開始した。
20:08 公設消防隊が到着したが、硫化水素による2次災害のおそれがあるため放水消火はしないで待機した。
20:44 鎮火を確認した。
20:45 反応器圧力が0.6MPaGに降下した。窒素ガスを系内に導入した。 
21:20 系の圧力が0.3MPaG以下に低下した。窒素ガスの導入による冷却は続行した。
28日01:15 非常措置指令を解除。
原因 原因は、390℃、10MPaGのガスが流れる配管の接続部(10インチ)において、部材の熱膨張の差などでフランジパッキンの締め付けが不均一になり弛みが生じたためとみられる。具体的には下記のことが指摘される。
(1) ホットボルティングの締め付け力に十分な余裕がなかった。
(2) フランジの上下で材質が異なっていた。上部がSUS321、下部が2・1/4Cr-1Moにオーバーレイ材で熱膨張率が違った。
(3) 配管の熱膨張がフランジを開く方向に働いた。
対処 1.緊急停止。
2.消防署へ通報。
3.窒素ガスを導入し冷却。
対策 1.ホットボルティング作業を360℃を越えてからは30℃ごとに追加実施。ホットボルティング作業を見直し、管理体制を強化。新増設の高温高圧部のフランジ部について特別点検団を編成し、定期点検を実施。
2.ホットボルティングの規程見直し、ボルトの締め付け力の管理体制を強化する。
知識化 1.高温高圧部のフランジの締め付け管理には、締め付け力の定量管理は当然だが、回数とタイミングが重要である。
2.ホットボルティングを行う系のフランジが全て同じ条件とは限らない。最も厳しい条件になる箇所を基準にホットボルティングの条件設定をすべきであろう。
背景 1.事故発生原因で具体的な事柄として指摘された3項目の内、後の2項目は系全体の問題点ではなく、このフランジだけの特異な問題だろう。特異な条件を見落としたこと、検討が十分でないことが問題であろうと推測される。
2.このプロセスは当時でも数多く運転されていたであろう。ホットボルティングの方法や回数についての情報は十分にあったのではないか。運転管理、工事管理に問題があったと考えられる。
よもやま話 ☆ 高温高圧という運転条件は過酷であるので、点検整備を十分に実施する必要がある。また、分解整備の組み立て作業は元に戻すという意識ではなく、新設の意識を持つとよいであろう。
データベース登録の
動機
ホットボルティングの不十分による事故例
シナリオ
主シナリオ 組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、マンネリ、使用、保守・修理、ホットボルティング、破損、破壊・損傷、ガスケット破損、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額3400万円
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.35、64-65
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧(1990)、p.154、170
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.34-37
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.63
物的被害 オクタゴナルリング熱損.減圧留出油若干被害.
被害金額 約3400万円(危険物に係る事故事例)
マルチメディアファイル 図2.発災場所図
図3.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)