事例名称 |
ディーゼル発電設備において古いガスケットを使用したことによる燃料油の漏洩と火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1989年10月13日 |
事例発生地 |
山口県 宇部市 |
事例発生場所 |
事務所ビル |
事例概要 |
1989年8月24日 貸事務所の自家発のディーゼル発電機の燃料供給ポンプ周辺の工事をした。その約2ヶ月後の10月13日開放修理した配管のフランジ部から燃料のA重油が漏れ、ディーゼル排気管の高温に触れ着火した。取外したパッキンを再使用したことが原因とされている。 |
事象 |
貸事務所業の自家発電機室でディーゼル発電機2機を定常運転中、1機の燃料供給ポンプのフランジから燃料が噴出し、高温の排気管により着火して火災となった。 |
プロセス |
使用 |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1989年8月24日、発災したフランジ周辺の工事を行った。 このさいに、燃料供給ポンプ出口の銅パッキンを交換せずに再使用した。 10月13日12:05頃 出火した。 12:08頃 自動火災報知器が発報した。 12:12 防災センター職員が火災を確認し119番通報をした。 初期消火が熱と煙のためできず、ビル内の避難誘導を実施した。 12:35 火災を鎮圧した。 |
原因 |
1.点検整備をしたときに、燃料供給ポンプ出口の銅パッキンを交換せずに再使用した。 2.点検整備から約2か月経過後、パッキン自体に緩みが生じて重油が漏洩した。 |
対処 |
1.自家発電設備の緊急停止。 2.燃料バルブの閉止。 3.電気の遮断。 4.消防署への通報。消火活動。 |
対策 |
1.作業標準の遵守。 2.設備改善。 |
知識化 |
ガスケット類は、取外した時に外見上異常がないことがあり、再使用されることがある。実際は使用に伴い組織や、強度などが変化し不適切な状態になっていることが多い。再使用の禁止を徹底すべきであろう。 |
背景 |
1.ガスケット類は再使用しないという工事管理の原則を無視して発生した事故であろう。 2.工事管理の問題だが、必要以上のコストダウンの要求はなかったか。 |
よもやま話 |
☆ 防火区画でさらに吸排気にヒューズダンパーがあるなど防火設備により、焼損を発電施設内にとどめられた。 ☆ もし点検終了後すぐに運転開始と仮定すると、漏れるまで約2ヶ月かかっている。この間のポンプ運転の微細振動が原因の一つになっているのか? ☆ 工事終了後には気密テストを行い合格したはずである。それでも時間経過とともに欠陥が出てくる。このように気密テストの合格は一時的なもので、正しい材料と正しい工法、手順で行われ、さらに維持管理がしっかりしていなければ欠陥が表れる。 |
データベース登録の 動機 |
パッキンを再使用した事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、理解不足、リスク認識不足、使用、保守・修理、修復、不良行為、規則違反、安全規則違反、破損、破壊・損傷、ガスケット破損、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.2億円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成元年(1990)、p.35、342-343
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物的被害 |
ディーゼルエンジン・発電機・ボイラー及びこれらの補機等焼損.A重油約10L焼損. |
被害金額 |
約1億2000万円(危険物に係る事故事例) |
マルチメディアファイル |
図2.設備の配置と出火場所図
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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