事例名称 |
接着剤製造開始時の暴走反応による爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1978年09月15日 |
事例発生地 |
大阪府 枚方市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
バッチ反応での接着剤製造開始時、暴走反応が起こり、爆発、火災となった。温度が上がらないために、再加熱をしたことが原因かも知れない。ただし、地裁判決では、同種の事故が先行してあったことから、幹部の責任を指摘している。 |
事象 |
バッチ式反応缶で接着剤製造開始時、加熱用スチームの供給過剰と思われる原因で、暴走反応が起こった。反応釜から漏洩した可燃性蒸気が工場建物内に充満し、爆発、火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
その他 |
物質 |
アクリル酸メチル(methyl_acrylate)、図2 |
アクリル酸(acrylic_acid)、図3 |
メタクリル酸(methacrylic_acid)、図4 |
メタノール(methanol)、図5 |
イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、図6 |
事故の種類 |
爆発、火災 |
経過 |
1978年9月15日の事故時に現場にいた作業員の供述の大要を以下に示す。 1. 反応缶にアクリル酸メチル、アクリル酸などの原料を仕込んだ。 2. 蒸気加熱と撹拌を開始した。70℃まで上昇したので、蒸気バルブを閉めた。 3. 3~4分経っても反応開始による温度が上昇せず、かえって0.5℃程度下がった。 4. 再加熱するため下部ジャケットの蒸気バルブを少し開いた。温度は順調に上昇した。 5. 再加熱開始後2分すぎに、温度計の急上昇を認めた。76℃になっていた。その時、缶内を見ると泡のようなものが盛り上がっていた。 6. 急いで蒸気バルブを閉め、冷却水を上部、下部のジャケットに入れた。 7. 缶内を見ると液が下から吹き上がってみえた。異常反応と判断し周囲に連絡した。シャフト下部からガスが吹き出した。その後反応器から異音が聞こえ、逃げ出してしばらくして、爆発が起こった。 |
原因 |
接着剤製造開始時に、暴走反応が起こったと判断された。バッチ反応の立ち上げ時に温度が上がらないからとして、再加熱した。再加熱のため加熱用スチームバルブを再度開けた運転員の判断が必要以上に温度を上昇させて、暴走反応の原因になった可能性がある。 着火源はフォークリフト、コンプレッサー給水ポンプ等の電気火花の可能性が高い。 |
対処 |
公設消防 |
対策 |
判決では指摘されていないが、バッチのスタートで温度が上がらないからと、さらにスチームバルブを開にした作業員の軽率なミスがある。温度が上がらない場合、さらに加熱させることはよくあることではあるが、作業マニュアルを十分に完備し、守ることが重要である。 |
知識化 |
反応槽において、操業条件、温度管理等に関するマニュアルを整備することが必要である。特にバッチ反応では、一回毎に細かな条件が変わってくるので、注意点を明確にする必要がある。 |
背景 |
暴走反応の原因は特定されていない。ただし、大阪地裁判決(確定判決)によれば同工場では過去に同種の異常反応事故が起こり、事故の発生が予見可能であったこと、コンデンサーの冷却能力が十分であるかを調査し安全性を確立する注意義務があったと指摘されている。これから、会社幹部の管理が原因の一つであろうと推測する。 |
後日談 |
後の裁判では、本火災は予見可能なものとされ、関係者は有罪となった。 |
データベース登録の 動機 |
バッチ式反応器の立ち上げ時の操作が不適切であったために起こった事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、漏洩・爆発、身体的被害、死亡、3名死亡、身体的被害、負傷、33名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害額1.6億円、社会の被害、社会機能不全
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情報源 |
消防庁、危険物製造所等の事故事例集-昭和53年(1979)、p.66-67
関東一、近代消防97年10月号、p.85
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死者数 |
2 |
負傷者数 |
30 |
物的被害 |
工場敷地内9棟全壊、5棟半壊.部分壊188(消防庁による). 工場から半径700m以内の民家120戸などの天井が抜け落ちたり窓ガラスが割れるなどの被害(朝日新聞による). |
被害金額 |
約1億4,500万円(消防庁による) |
社会への影響 |
爆発音とともになまぬるい風が吹き抜け、異臭立ち込める. |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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図4.化学式
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図5.化学式
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図6.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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