事例名称 |
ジメチルスルホキシドを含むエピクロルヒドリン廃液の減圧蒸留中の暴走反応 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1990年11月07日 |
事例発生地 |
岐阜県 輪之内町 |
事例発生場所 |
廃油再生工場 |
事例概要 |
受託して蒸留を行う装置で爆発が起こった。エピクロルヒドリン(ECH)とジメチルスルホキシドの混合廃液であるECH廃液からECHを回収するため減圧蒸留を行った。塔底部で重合反応が始まり、ECHモノマーの減少とともに温度が上昇した。さらにスチーム加熱を続けたために、ECH廃液の重合や分解が起こり、急激な温度圧力の上昇から爆発火災になった。 |
事象 |
他社からの依頼で蒸留処理をしている装置で爆発事故が起こった。エポキシ樹脂製造で発生するジメチルスルホキシド(DMSO)約30%と、エピクロルヒドリン(ECH)約60%を含むECH廃液から、減圧蒸留でECHを回収中、塔底温度の上昇から暴走反応による爆発・火災が起こった。なお、発災事業所でECH廃液の蒸留は初めてであった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、図3 |
ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、図4 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1990年11月6日08:00頃 蒸留塔を真空にして、原料70ドラム(14,000L)を仕込んだ。 14:00 真空度100torrにして、蒸留作業を開始した。 7日07:00、07:20 加熱蒸気の安全弁が作動したため、加熱蒸気圧を下げた。 07:45 蒸留塔の一部から白煙を生じた。事務所に連絡後、現場に戻る途中で爆発が起こった。原料が飛散するとともに、マンホールから火炎が噴出した。 |
原因 |
ECHの重合反応が起こり、塔底組成の重質化により、釜内の温度が上昇し、ECH廃液のECHの重合やDMSOの分解などが急激に起こった。その圧力上昇で原料液が噴出し、爆発、火災になった。マンホールの蓋が飛び散った際の衝撃火花が着火源と推測された。 |
対処 |
公設消防の出動以外は記録がない。 |
対策 |
反応に対する十分な知識が必要である。また、不純物の内容は事前に把握する。 |
知識化 |
廃液の蒸留中の暴走反応事故は多い。温度、圧力の監視、反応に対する知識が必要である。また、小型装置で十分な知見を得てから本格プラントに進めるべきであろう。 |
背景 |
当事業所では、ECHの回収のための蒸留作業は初めてであり、反応危険に対する十分な認識がなかったと推測される。また、文献収集、同業他社からの情報入手の不足と思われる。なお、別の報文によれば、ECH、DMSOは単独の場合に比べ、共存するとき著しく危険性が増すとの報告もあり、このような危険性を蒸留会社、発注元ともに把握していなかった可能性もあろう。 |
データベース登録の 動機 |
初めて実施する蒸留の危険性調査が不十分で、発熱反応を起こした例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、勉学・経験とも不足、価値観不良、安全意識不良、リスク意識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、反応特性など把握不足、計画・設計、計画不良、設計不良、非定常行為、無為、打つ手不明、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、組織の損失、経済的損失、損失額3700万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成2年(1991)、p.80-82
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧-平成3年版-(1991)、p.221
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
蒸留装置一式の蒸留釜、蒸留塔、コンデンサー、ポンプ、配管、計装類を焼損及び破損. |
被害金額 |
約3,700万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・化学プラントユニットプロセスの安全/蒸留における安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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